☆矢文.
□手料理
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【手料理と必殺技】(童シオ)
「ムウよ、料理を教えろ」
なんの予告もなく、いきなり白羊宮に来たかと思えば、大恩ある師シオンは爆弾発言をかます。
暫くの沈黙の後、ムウはため息混じりに呟く。
「…誰を殺るのですかシオン、回りくどい事などせずとも必殺技をかませば済むのではないのですか?」
「お前もデスマスク達と同じことを言うのか」
ムウの所に来る前、双魚宮に居たデスマスクに『私にでも簡単に作れる料理を教えろ』と言った瞬間、間髪入れずに
『ジジイ、一体誰を殺るんだ?』
と、言われたらしい。
童虎に手料理を作ってやりたいのだと告げたシオンにデスマスクは
『止めてくれ、積尸気使って、黄泉比良坂まで老師を迎えに行かなきゃなんねえだろ』
と真顔で言い放ったらしい。
アフロディーテは隣で、
『良かったら無味無臭の毒を分けましょうか?』
とまでいわれ、仕方なしにムウの所に来たと言う事らしい。
「ムウよ、お前なら私でも簡単に作れる料理を知っているだろうと、わざわざ此処まで来たのだ」
小さな子供(弟子)を面倒見ているムウなので腕は確か、しかしシオンに教えるとなれば話は別である。
「シオン……前回老師に弁当を作るといって、お米を洗剤で洗ってましたよね?しかも卵焼きに何故か、重曹混ぜてましたよね?」
ため息混じりに真実を突き付けるムウ、だがここで引き下がるシオンではない。
「童虎の誕生日が近いので、欲しい物を聞いたら『手料理が食べたいのう』といったのだ!」
涙目になりながらも力強く言い放つシオンの性格上、いくら説得をした所で引き下がらないことを知っているムウは、仕方がなく諦めた。
「分かりました、老師を死なせるわけにいきませんので、私が隣で指導します。」
隣で喜ぶ師を横目に、『老師勇気がありますね…』と今までのシオンが手懸けてきた料理(最終兵器)を思い返しながら、天秤宮に戻ってきている老師に、小宇宙を飛ばした。
『シオンがワシの為に必死になる姿が見たいのじや』
笑いながら答える童虎。
『それで死んだら元も虎もありませんがね』
呆れてながらも、これから起こるであろう不測の事態に、対策を思案しながら頭を抱えるムウを余所に、童虎は楽しそうに話す。
『ワシが死なん程度に教えてやってくれ』
ムウのスパルタのお陰で、と言うより殆どムウが作ったといってもおかしくない代物が出来上がったため、童虎の誕生日は何事もなく無事終わったらしい。
「童虎…来年こそはちゃんと!」
来年にリベンジをかけるシオン。
【完】