☆矢文.

□天の邪鬼が伝える愛の言葉
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童虎の欲しい物は判ったが、それをするのには恥ずかしさが上回るので他の物を、とも考えたのだが、選ぶことが出来ず時間は刻一刻と進み、誕生日当日。

この日は朝から天秤宮で誕生日会の準備が行われていた。
その横では、老師の人柄だろう多くの聖闘士達が老師に挨拶を交わしていた。

その様子を影で見ていたシオンにムウが声をかける。

「たった一言なのですから、言っても罰は当たらないと思いますがね」

「…」
ムウにそう言われ、返す言葉もなく佇むシオンを余所に、貴鬼がプレゼントを老師に渡しながら『老師大好き!』と言っているのを、二人はやり取りの間に聞いた。

「貴鬼でもちゃんと言えるというのに……シオン、子供に負けてますよ」

素直になれないシオンにムウはため息混じりに呟く。



昼から夜にかけて行われた誕生日会は、夜も遅くになり身内だけが天秤宮で集まり執り行われていた。

黄金達の雑談中。
童虎の横では、いつも以上のペースで酒を飲むシオンに心配した童虎がシオンから酒を取り上げる。
「これ、程々にせんか」

暫くじっと見つめていたのだが、かなりの酔いが回っていたのか、シオンはそのまま寝入ってしまった。

早いうちに青銅達が帰り、暫らくは黄金達だけで盛り上がってはいたのだが、夜も遅くなるためお開きに。
他の黄金達が帰る中、揺すっても叩いても起きないシオンに対し起こすのを諦めたムウは天秤宮に残す事にした。
「起きないので諦めます。老師、シオンをお願いします」

皆が帰り、静まり返る部屋に二人。

酒盛りをしていた広間に放置するわけにもいかず、酔い潰れたシオンをベッドに運ぶと、自分の手に馴染むシオンの髪に触れ頭を撫でる。

閉じていた瞳がゆっくりと開かれ、童虎を見つめる。

「童虎…」
「どうした、水か?」
首を横に振り、自分の頭に置かれていた手を握ると、口付ける。
そして少し視線を反らせると、恥ずかしそうに小さな声で呟いた。
「……童虎、愛してる」
と。
シオンの口から紡がれる愛の言葉。

童虎は優しくシオンを抱きしめ感謝の気持ちを伝える。
「ありがとうシオン、最高のプレゼントじゃ」
シオンは童虎の背中に手を回し、抱き寄せると耳元で囁く。

「童虎、私にも言ってくれ」
「ああ、ワシも愛しておるぞ」

その夜、日付が変わるまでシオンは童虎に求められるままに、愛の言葉を囁き続けたのだった。
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