☆矢文.
□天の邪鬼が伝える愛の言葉
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「呆れてものが言えませんね」
五老峰から帰ったムウは、シオンに合うなり呟く。
「老師にはあんなに求めるくせに、自分からは言わないなんて」
そんなムウの言葉を不貞腐れて聞いているシオン。
ムウが五老峰まで行き、『欲しい物は無いが、してほしい事なら…』と照れ臭そうに言う老師の欲しい物をなんとか聞き出した。
童虎が誕生日にシオンにして欲しい事はたった一言【愛してる】と言って欲しい、との事だった。
その願い事を知ったムウは、老師に『シオンは一度も言ったことが無いのですか?』と聞き返したのだった。
「天の邪鬼にも程がありますよ、老師は笑いながらおっしゃってましたが、これが他の男なら速攻振られてますよ」
「そんな恥ずかしい事言えるか」
前聖戦から200数年、いつ果てるとも分からぬ時代を生きた二人ゆえに、そんな甘い言葉など交わしたことは一度たりともなかったのだ。
ただ、聖戦が終わり生き返った後、シオンは童虎にその言葉を求めた。
「自分は恥ずかしいから嫌だと?本当に天の邪鬼ですね。でも老師の欲しいものは分かったのですから、後は自分でどうにかしてください。」
ムウはそう言うと姿を消したのだった。