☆矢文.

□花火
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【闇夜に浮かぶ大輪の花と寄り添う一厘の花】(童シオ編)


「女神に感謝せんとのぅ」

童虎は温泉に浸かりながら暢気に答える。

童虎とシオンは日本に出張と言う形で任務に着いていたのだが…

「お二人で温泉にでも浸かって、ゆっくりして帰ってきてください」

と女神が親切に宿を取ってくれた事に感謝し、好意に甘え1週間のんびりする事にしたのだ。
見目こそはピチピチの18歳の男なのだが、中身は261歳と言うパワフルジジイコンビなので、日本の温泉を満喫している。

町を散策ついでに、夕涼みでもするかとロビーに来た二人は、宿の女将に近くで花火大会があることを告げられ見に行くことにした。





花火の開催時間まで後少しとなり辺りも暗くなり、人が多くなり始めた。
そして…何の合図もなく夜空に打ち上げられる無数の花火に言葉もなく見つめるシオン。

不意に童虎がシオンの頬にキスを落とす。
驚いたシオンが小声で咎めるも、童虎は笑いながら手を握ってくる。

「大丈夫じゃ、皆花火に夢中じゃ誰も気づきはせんよ」

暗闇と音で隠された甘い大人の時間。

もう一度深く口付けを交わしたのだった。



「花火とは良いものだな」
「じゃが、聖域で打ち上げたら騒ぎになりそうじゃのぅ」
そんなたわいのない会話を交わしながら帰宅途中、ふと視線を感じたシオンは、こちらを見つめる男児と目が合った。

「ママーあのお兄ちゃんたち、さっきちゅーしてたんだよね」

男児の爆弾発言により、一瞬その場を沈黙が襲う。
言葉もなく佇む二人を尻目に、男児を小脇に抱え母親は笑顔を見せ足早にその場を立ち去った。

我に返ったシオンは童虎を睨み付けると怒りを露わにした。
「童虎ー!!何が誰も見ておらんだ、しっかり見られておるではないか!」

「ははは、子供には花火の良さはまだわからんみたいじゃのう」

シオンに髪を引っ張られながらも、笑顔で交わす童虎に容赦ない攻撃をするシオンだった。



【完】
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