☆矢文.
□身分違いの恋
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暗い箱の中で揺られながら新しい住まいへと着いたサガ。
箱から出されたサガは恐る恐る周りを見回す。
今日から此処で暮らす事になるのだと思いながらも、考える事は窓の外にいた野良犬の事。
「ねえ、君の名前は」
何処かからサガに対して声を掛けてきた。
飼い主に抱き抱えられる状態でしんみりしていたサガは視線を下に、するとそこにはあの野良犬が。
飼い主の足元を周りながらサガを見つめ質問を投げ掛け続ける犬の傍に降ろされたサガは、状況が今一飲み込めず狼狽えている。
「俺はアイオロス、皆はロスって呼ぶよ、君の名は?」
「私はサガ」
「サガ…良い名前だね」
「君は野良犬なのでは…」
取り敢えず疑問をぶつけるサガに対して、ロスは呑気に答える。
話を纏めると、野良犬だと思っていたアイオロスは実は血統書付きの由緒正しい犬だった事、更に散歩が大好きで飼い主の目を盗んで脱走していた事が分かった。
「今日から家族だよ」
アイオロスの言葉に涙を流しながら、サガはずっと伝えたかった言葉を告げる。
「もう二度と君に会えないのだと思ってた」
多分一目惚れ。
言葉も交わせず、触れ合う事も出来ないまま、もう二度と会えないのだと、寂しさで胸が押し潰されそうになりながら、それでもあの笑顔が好きだったらか弟に身代わりを託した事。
言葉を詰まらせながらも、必死に伝えようとするサガをアイオロスは優しく聞いていたのだった。
数日後。
アイオロスとサガは二人仲良く散歩(脱走)を咬まし、ペットショップ【ジャミール】まで赴き、カノンに中睦まじい姿を見せに行ったらしい。
【プチオマケに続く】