☆矢文.

□都市伝説
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夜中と言うか明け方近く、アイオリアは胸の重さで目を覚ました。
体は動かないが、目を開けることは出来るみたいなのでそっと目を開けてみた。
そこには何故か無言でシャカがアイオリアに跨っていたのだった。

「シャカ何か用か」

普通の人なら狼狽える状況なのだが、シャカのおかしい行動に慣れているアイオリアは至って冷静だった。

「君が好きだというから、わざわざやってきたのだ」

アイオリアは首を傾げ考えるが、自分が何が好きだと言うのか分からないし、ましてや夜中(早朝)に馬乗りになられる理由が見当たらない。
仕方がないので単刀直入にシャカに聞いてみることにする。

「何を」

「さあ!好きなだけ揉むが良い!!」

「はい?」

シャカの行動がおかしいのは何時もの事だが、話の流れがまるっきり分からない。
何を揉むって?しかも好きなだけって。
ここで悩んでいても仕方がないと、アイオリアは更にシャカに聞いた。

「何を揉むんだ?」

「君が巨乳好きだと聞いたのでな、仕方がないから私の胸を揉ましてやろうとやってきたのだよ」

『誰が巨乳好きだって…』自分がそのような発言をした記憶もないし過去そんな会話をした記憶もない、まして女聖闘士の胸をまじまじと見た記憶も無い。
しかも、当のシャカは見た目こそは綺麗だがれっきとした男、巨乳ではない。

「シャカ、誰がそんな事言ったんだ」

「蟹」

デスマスクー!! と心の中で叫ぶアイオリアを尻目に淡々とシャカは話を続ける。

あれは昨日の話。
シャカは教皇の間からの帰り道、自宮へ帰宅するため通りかかった双魚宮で、アフロディーテとデスマスクが喧嘩をしている現場に遭遇。
喧嘩の訳を聞くと、デスマスクがムチムチプリンプリンな女の人の写真集を隠し持っていたというもので、アフロディーテが『これも立派な浮気だ!!』と詰め寄っている正に修羅場中との事。

「男はオッパイ大好きなんだから仕方がないだろ」

「私が貧乳で悪かったな!好きなだけ揉ましてくれる女性と付き合え!!」

男で巨乳もどうかと思うがアフロディーテは本気だった。


「…ディーテ、俺はお前には本気だぜ」

「デス」

こんな言葉でコロリと騙される魚一匹、蟹の作戦にまんまと引っ掛かり、デスマスクはちゃっかり許してもらったらしい。
二人のいい雰囲気を押し退けるようにシャカは質問をぶつける。

「蟹、男はオッパイが好きなのか?」

「蟹って呼ぶな、ああ、そうだぜ男は大好きだぜ」

「ならアイオリアもか?」

「アイツも男だから好きだろ?」

「困ったな、私はそんなに大きくはないのだ」

デスマスクの返答に、困った表情でシャカは自分の胸を擦りながら呟く。

「だったらアイオリアに揉んでもらって大きくしてもらえよ」

「何、揉んだら大きくなるのか」

何処まで信じていいか分からない眉唾話を、さも真実のごとく話すデスマスクの言葉を聞きながら、次なる行動を考えていた。

と此処までが回想。




「シャカ、何を吹き込まれたかは知らないが俺は巨乳好きではない」

シャカの話を聞き終わったアイオリアは、誤解を与えないように否定する。
それでも不満そうなシャカに対して、後々後悔する羽目に成るであろう一言を告げる。

「お前だって男だろ?お前はオッパイに興味があるか?」

「…そうだな私とて男、だが君以外に興味はない。仕方がないので揉んで大きくしてみよう…」

嫌な予感的中、気付くとシャカが開眼状態でアイオリアを見下ろしていた。

「なっ?ちょっと待て!目を開けるな、俺から降りろ!!」

「問答無用、さあ揉まれるがいい」




清々しい朝の人馬宮。

「で、巨乳になれたのか」

「兄さん、これはオッパイが出来たのではなく腫れてるだけだから」

何時もの朝練に現れたアイオリアの胸は、それは無残に腫れていた。
昨晩(早朝)のシャカとの交戦は、五感を剥奪され意識の無いアイオリアがシャカの気が済む迄胸を揉まれたらしい、但し本人は記憶なし。
目を覚ましたアイオリアの胸は物の見事に真っ赤に腫れていたのだった。
 弟の話を聞き終わった後、無残に腫れたおっぱいを眺めながらアイオロスが呟いた一言。

「そっか、揉んだら大きくなるんだ…」

アイオロスのこの呟きは風の音で掻き消されたのだが、後にトラブルを起こす事は確実なのだった。
そして今夜も胸を揉みに、シャカが獅子宮にやって来る事を、この時点でアイオリアは気付いていないのである。

【完】
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