☆矢文.
□疑惑と真実
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サガとカノンの普段の会話。
「カノン、カモメ眉毛は元気なのか」
「サガ、ラダマンティスだ」
「ああすまない、所でトカゲは…」
「サガ、俺の恋人をそのような名称で呼ぶのはどうかと思うが」
サガはラダマンティスが大嫌いらしい。
理由は多々あるみたいなのだが、アフロディーテ曰く『カノンの事が大事だから弟を取られたみたいで嫌なんだよ』と言っていた。
サガに直接聞いたら生理的に受け付けないといっていた。
かなり前の話、酔っ払ったサガに対して根掘り葉掘り聞いていく内に分かった事は、サガは聖衣を脱いだ生身のカノンに惨敗したラダマンティスが嫌らしいと、言うこと。
だったらサガも似たようなもんだろうと思うのだが、サガ曰く『手を掛けたのはシュラだから』と、シュラが聞いたら引きこもりそうな内容をさらりと言い放った。
「ど、三流野郎がどうやらアイオロスと頻繁に連絡を取っているみたいなのだ」
いい加減突っ込むのも疲れたカノンはそのまま話を聞く。
気付いたのは偶々、それもメールだとか電話だといった手段が主だったのだが、何故か今回は次の休みに合う約束をしていたと。
「あんな浮気者早く別れた方が良いと思うのだが」
「ちょっと待て。ラダマンティスが浮気ならその相手はアイオロスになるだろうが、だったらお前の方も浮気になるのではないのか?」
「アイオロスは大丈夫だ」
その自信が何処から来るのか分からないが、サガさらりと返す。
ラダマンティスの浮気実証と銘打って後をつける事に決まった数日後。
そんなこんなで、アイオロスに気付かれないように変装したサガとカノンは、少し離れた場所から様子を伺っている。
それでなくても目立つ二人なのだが、今回の変装も違う意味で目立っている事に気付かないサガを無視しつつカノンは様子を伺っている。
待ち合わせ場所であるカフェではアイオロスが時計を気にしながら待っている様子だ。
尾行初期こそは互いに会話を交わしていたのだが、次第に口数が少なくなっていったサガは終盤は黙りこくってしまった。
「…アイオロス楽しそうだな」
アイオロスとラダマンティスとの尾行の最中、黙っていたサガがボソリと呟く。
「やはり私の事を許してはいないのでは…」
カノンが否定の言葉を口にするも、サガの胸に湧いた疑念は更に広がっていく。
アイオロスが私に囁いた言葉は全部嘘だったのではないのか、アイオロスは私と居るのはきっと優しさからで、実は別れたいのだと。
最後にサガはカノンの静止を振り払うと涙を浮かべながら一人重い足取りで帰っていった。
「カノン、サガの様子は?」
「別に」
アイオロスのラダマンティスデート疑惑より数日たったのだが、サガは双児宮より出て来ないらしく、アイオロスの小宇宙通信にも返答なし、アイオロスは困り果てカノンに聞きに来たのだった。
デートを観察してましたとは言えないカノンは曖昧に返す。
「そう?だったらサガに…」
普段なら断るであろうお願い事なのだが、後ろめたさから承諾したカノン。
次の日の朝。
自室のベッドから出て来ないサガに痺れを切らしたカノンは、シーツを奪うと大声で怒る。
「いい加減にしろ!服を着替えて出掛けるぞ!!」
渋るサガを無理やり連れ出し向った先は先だってのカフェ、しかも其処にはアイオロスが待っていた。
「サガ誕生日おめでとう」
アイオロスは笑顔で、後ろに隠していた真っ赤な薔薇の花束をサガに差し出す。
「誕生日?別れ話では?」
「何で別れなくてはいけないのかな」
サガはアイオロスから別れ話を切り出されるのが怖くて、ラダマンティスとのデート疑惑より以降ひたすらアイオロスから逃げていたのだ。
「だって楽しそうにデートをしていたではないか!!」
「…デート?ああ、あれは」
5月30日はサガとカノンの誕生日。
アイオロスはサガの誕生日に、楽しんで貰えるような事をしたいと考えたのだが、何をしたら良いのか分からない。
そこで双子のカノンの恋人であるラダマンティスに、それとなく相談をしたという事。
最終的にサガをエスコートして食事と決まったのだが、デートと言う行為自体が初めてなのでラダマンティスに予行練習を兼ねてらったと言うことだった。
「愛してるよ」
「ロス」
愛の言葉を囁きながら、サガを抱き寄せると額に口付けを寄せる。
それを、逃げる事もせず受け止める二人の周りは薔薇色。
「テメー等公衆の面前でイチャイチャすんじゃねー!」
カノンの怒号を無視しつつ二人のデートは始まる。
【完】
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