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□意地悪な優しさ
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―意地悪な優しさ―
(グリレss sideレッド)
グリーンに防寒着諸々の配達を頼んでから、数日が経った。
まだ彼は来ていない。ジムリーダーだし、色々とあるんだろう。
怒られる筈なのに、オレの胸はグリーンに会えることへの喜びで一杯だ。本人に言ったら火に油を注ぐようなことになるけど、本当に楽しみで仕方ない。
――そうして、少し雲が薄くなったとある日。
「寒いな、」
ポケギアを握っていると冷えきった金属の冷たさが身に凍みる。高台に登ってピカチュウを抱き締め、ほっぺたをつねってやった。すると相棒は可愛い声を上げてはしゃぐ。
「オレにはそんな元気ないよ」
あぁ、こうなるんだったらきちんと準備しとくんだった、と後悔していると。
「迎えに来い、こんの朴念仁がっ!!」
怒声と共に大きなリュックが飛んできて、オレは顔から雪面に突っ込んだ。
ここまで来れるトレーナーは只一人だ。
思い切り打ち付けた鼻を擦りながら、オレは振り返った。
「……久しぶり、グリーン」
幼なじみの彼は深緑のコートを纏って仁王立ちしている。予想通り、怒っていた。被害を被らないようにピカチュウを離し、笑ってみるけど表情は変わってくれない。
「ったく、何でお前はこんなところにいるんだ。来るのが面倒でしょうがねぇ」
早く帰ってきやがれ、と口調は乱暴だ。真意を理解しているから傷つきはしない。
「だけど来てくれた」
「それは……お前だからだよ」
特別さ、とグリーン特上の微笑み。頬が一気に熱くなっていく。拳を振りかぶるけど、あっけなく避けられた。まったく、いつもこいつには適わなくて嫌になる……!
防寒着は? と掌だけ彼に向けると、柔らかくもこもこした感触が置かれた。紅のコートだ。
それを羽織ってから違和感を覚えて、グリーンの上着と自分のを見比べる。
「なんか……さ。グリーン、もしかして……」
ポケットの数や厚さなんかがやけに相似している。まるで、同じ商品のように。
グリーンは親指を立てた。
「色違いのお揃いだ!」
「……っ!」
何だ不具合でもあるのかと覗き込んでくるグリーン。にやにやと人の悪い笑みを浮かべている。分かった上でやっているに違いない。
オレは溜め息をついて、少しサイズが大きめなコートに顔を埋めた。
「……ありがとう」
「どーいたしまして」
全く、意地悪なんだか優しいんだかはっきりしろよな!
fin.
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旧拍手感謝文でした。
シロガネ山のおはなしが好き過ぎて困る←
私の中では、グリーンは意地悪です。けど親しい人には優しいし、困ってる人は助けてあげます。
レッドは素直に誰でも助けてあげてそう。
ちなみにお揃いというのは、私の趣味です←
2010/02/25 PM06:47
翠鈴