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□貴方に逢えたコト
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 目の前で無言で微笑んでいるレッドという少年には、「声」がない。





 正確に且つ具体的に言うと喋れないということだ。
 どうしてそうなったのかは知らない。興味がないというわけではないが、姉さんは教えてくれなかった。



『病院で独りの子がいるの。構ってやってくれない?』



 そう姉さんに頼まれたのは昨日。いきなり夕飯の最中に告げられた。
 彼女は街で唯一の病院の専属看護師。しかも詳しくは分からないが、結構偉い立場にいるらしい。
 両親は都会の病院勤めだから、姉さんは俺にとって唯一の家族同然だ。了承出来ないなんてあり得なかった。



 彼女はレッドのことを「素直ないい子で、優しい性格だ」と話した。いつも常備しているスケッチブックとペンで会話する、とも。



 けれどレッドは未だにスケッチブックを出さない。そりゃあ俺でなくたって焦る。





 俺が困っている理由を、ご理解いただけただろうか?






2010/02/14 up
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