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□2nd lover
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―2nd lover―
(ゴーレ前提グリレ失恋ネタ sideグリーン)
大切なものは無くしてから気付く、とよく言う。幼い頃の俺は意味がよく分からなくて、「とりあえず全部守ってやる」と宣言した。
だけど、そんな甘くはなかった。
失うだけではない。心奪われ、こっちを振り向かなくなることだってある。
例えれば、視線の先ではレッドとゴールドが仲睦まじく話している状況だ。あんなイチャイチャしてる横では読書に熱中しにくい。
それに、幼なじみはとても楽しそうな顔をして、幸せそうで……。レッドは俺に向かってあんな表情をしてくれたことはない。
(どうして俺は選ばれなかった)
(どうしてあんなに幸せそうなんだろう)
(どうして、俺じゃないんだ)
大切なひとがいなくなった訳ではない。横からかすめ取られただけだ。けれど、それに匹敵するほどに痛い。
こうなると知っていたなら、もっと早く行動していたのに。
今更後悔したって遅いから、もう諦めているが。
小さな頃から一緒にいた。いつだって見てきた。だからレッドの性格はよく知っている。
他人に求められたら断れない。きっと俺が告白したら、応えてくれるだろう。
でも、その生活が楽しいとは思えない。
2人でいても、レッドの心はゴールドを欲して振り向いてくれない。辛いだけだ。
現状でもそうなのに、恋人になったらもっと酷くなる。
そう、
これは、望みのない片想いなんだ……。
俯いて椅子にかけ直し、本の文字を追う。あまり内容が頭に入ってこない。あいつの一言一言が耳に引っ掛かって集中出来ないんだ。
「……部屋で読もう」
部屋を出ようと腰を上げ、立ち去ろうとした時だった。
「俺とグリーンさん、どっちの方がいいですか?」
見計らったかの様なタイミングでゴールドの言葉が聞こえた。
驚いて振り返ると、ゴールドは俺に向かって小さく微笑んだ。勝者の優越感に満ちた笑み。
「レッドさん?」
心臓が途端にうるさくなり始める。
答えは分かり切っている。俺の名前が発されるなんてないだろう。
――考えれば、当然の話じゃないか。
俺よりゴールドの方が頼れる。大体レッドが好きなのはゴールドなんだ。いくら幼なじみだからって、漫画みたいに上手くは行かないのが条理。
分かってる。分かってる、よく理解してるさ。
ああでも、期待してしまうのが人間の心情というもので。
その唇が何度も開閉され、キョロキョロと紅の双眸は動いて……、
「……ゴールド、だよ」
ゴールドはちらりと俺を見やってからレッドの方に向き直り、笑顔を咲かせた。
「本当ですか?」
「ホントだよ、」
「うわー、俺嬉しいですっ」
背筋が異常に冷たい。視界が暗くて、何も見えない。目の前で広がっている現実が、別世界みたいだった。
レッドは頬を染めて、ゴールドのハグを受け止めている。
「――っ!!」
いてもたってもいられなくなって、俺は部屋の外に出た。乱暴にドアを閉めても、微かな声は消せきれなかった。
ゆっくり息をはいて天井を仰ぐ。
「……恋愛においては、あっちの方が先輩だな」
臆病で怖がりで。傷つくのを恐れ、結局想いは叶わずに。
「俺じゃ……無理なんだ、よな…………」
レッドより弱い俺が、選んでもらえる訳がなかったんだ。だから、早くあいつのことは忘れよう。
忘れて、――……。
でも、けれど。
「……忘れられるわけねーよな」
笑顔が。柔らかい瞳が。お人好しで、いつも隣にいたあいつが好きなんだ。
情けない自分に苦笑いがこみあげてくる。視界まで滲み出した。
「レッドが……好き、なんだよ……」
――2番目でいいから。
2番目でいいから、俺に愛させてくれないだろうか? 少しでいいから、夢を見させてくれないか?
これ以上の苦しみなんて要らない。
もしお前が嫌ならば、その時は。
直接、「嫌いだ」と告げてくれ。
(そしたら、きっと。)
fin.
―
ゴールドが悪人になったΣ( ̄□ ̄;)
何だかかなり無理矢理になってしまいました。
でも多分、グリーンは「嫌い」と言われても好きなんでしょうね。
……何かグリーンが可哀想だ。ごめんよグリーン。私は君が大好きだ←
クラリネット様、リクエストありがとうございました!
気に入らないようでしたら何度でも書き直しますので申し付けて下さい。
2010/01/15 AM01:53
翠鈴