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□急転エモーション
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―急転エモーション―
(グリレ sideグリーン)





 ジムリーダーはずっとバトルしていられる訳じゃない。夢見る少年たちには悪いが、事務処理だってたくさんある。
 だから、常時俺の部屋は時々書類が散乱しているわけだ。



「……だからってさ……」
「何も言うなレッド。ブルーに言ってくれ」



 呆れた紅の瞳の先には雪崩た紙々たちがあった。折れ曲がったのや汚れてしまったのもある。
 元々これはきちんと山になりバランス良く立っていた。面影もないけれど。



 脳裏に蘇るのは、野生のポケモンが窓を突き破り飛び込んできた姿と、続いてやって来たブルー。





『あっははー、ごめんごめん! やっちゃったみたいだね!でもグリーンならなんとかなるよねっ』





 などと軽々しく言った後に逃走しやがったのはよく覚えている。あぁ、思い出したらまた腹がたってきた。



 レッドはしばらく風景を眺め、それからペンを拾って笑った。



「……大丈夫。俺も手伝ってやる」
「は? いや、でも悪いのはあいつ「いーから! ……で? どれが何処なんだ?」



 おーこれオレが誕生日にあげたのじゃん! とにこにこしている後ろ姿に悪意は感じられない。時間がかかりそうなこの仕事を善意でやってくれるらしい。相変わらずのお人好しだ。



 善意というのが悲しいような気もするけれど、有難いので素直に従うことにした。





 ――が。





 ちょうど年が終わりかけていたのもあっては、誰だって作業が難航するに違いない。量が多いわややこしいわで頭が焼けそうだ。



「オーバーヒートする……」
「大丈夫だ。図鑑所有者ならそのくらいどうにかするだろう」
「いやオーバーヒートってそっちじゃなくて!」



 こうして掃除していると、図鑑所有者もジムリーダーも只の悪戦苦闘している極普通の人間になる。掃除に強いのは女と決まっているものだ。



 だったら尚更ブルーがいなければならないのに、哀しきかなあいつは逃げた。
 溜め息をついて床に腰を降ろす。ずっと立ちっぱなしだったから節々が痛い。



 そんな俺を見て、レッドが頭を撫でてきた。



「大丈夫? ずっと仕事だったのに、これは辛いかな」



 ……途端に俺の眉間に皺が寄った。



 気遣いは嬉しいけれど、自分が疲れているのにレッドは平気というのが嫌になったのだ。仕事があったとしても、元々はこっちの方が体力があるはずだ。
 感情のままにその手首を掴んで引き寄せると、レッドが驚いて「どうしたの」と訊ねてきた。俺は無視して、さらに細腕に握力をかける。



「……お前、いつからそんな余裕綽々になった」
「いた……ちょっと、痛いよグリーン」



 弱い。抵抗したってびくともしない。なのに。
 何だか悔しくなって、乱暴にキスをした。



 数秒経っただけでレッドの足が崩れ、俺が優位になる。間近で煌めく赤は、戸惑いを映していた。



「ぐり……っ」



 ホラ、こいつは俺に適わない。そうだろ?
 口元だけで微笑んで、舌を侵入させると細い身体は震える。
 肩口を書類の散乱したフローリングに押し倒すと、レッドが困り顔で問い掛けてきた。



「……グリーン?」



 何もせずにいると、レッドは俺の腕から擦り抜けて、くしゃくしゃになった紙を一束に纏め始めた。横顔には焦りなどない。
 さらに悔しさが倍増して、俺は再びレッドを腕に収めた。



「ちょっと……掃除は?」
「何とかなる」



 何だそれ、と小さく声がする。柔らかい、優しいこえ。
 そっとレッドの両方の掌を包んで、瞼と共に閉じる。すると全体重を預けられた。



「これが目的だったんじゃないだろーな」
「まさか。お前が変なことするからだ」
「何もしてねーしっ」








 ――たまには、散らかった部屋で愛し合うのもいいだろ?








Fin.







初のポケスペ版グリレでした〜。

つってもあまりそんな感じしませんでしたが。ブルーが犯人ってところぐらいですかね。つか無理矢理。

これは元々シリアスだったのを改正しまくって普通にしてみました。なので所々変です(´`)

書類の上でイチャイチャしてるのが書きたかっただけです。只の翠鈴の趣味ですね←


2010/01/04 PM11:16
翠鈴

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