LamonedeU

□‡君の笑顔に祝福を‡
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寒いと言うと



お前は抱きしめてくれた



でも、その手は ずっと



俺よりも冷えていた












  ‡君の笑顔に祝福を‡












「…うー…む」


深夜のパンドラ本部の廊下で
ブーツをゆっくりと滑らせながら何枚もの書類に目を通していた


(…また仕事サボりやがったな)


並びに並ぶ黒い活字を目でなぞり読み終われば一枚めくる


そんな単純な行動を繰り返していた、その時


白を基調とした廊下には明らかに浮いている薄紫の髪に、紅の瞳が視界に入った


(…ブレイク…?)


視線の先には手に持つ書類。


どうせ今、渡されたのだろう


紅い瞳は不機嫌に字を追っていた


軽く舌打ちし 書類を乱暴に脇に抱え、前を向いたかと思うと
紅に俺が映った


紅い紙に墨汁が広がるように



「オヤ、ギルバート君。こんな晩くまでお仕事ですカ?」


「…」


ポコッ


白々しくスキップで来るコイツの頭を書類で軽く叩く


「誰のせいだと思ってんだっ」


ブレイクは頭をわざとらしく手で抑え、俺を見上げると
ぷーぷーと言い出した


「恋人を叩くなんて非常識デス」


"恋人"と言われて顔が真っ赤になるのを必死で治そうと


「うるさい。ぐうたら上司めっ」


毒を吐く


コイツは平気でこの言葉は吐くから凄く困る


そんな俺を見て クスクス笑う奴の紅い瞳は、さぞ楽しそうに細まった



「全く、ギルバート君は変わりませんね。純粋と言うか…ヘタレと言うか…」


「ヘタレとか言うなっ!!」


ヤレヤレと袖を振るブレイクに
怒鳴る


そんな二人のやり取りの影は
蝋燭の炎に照らされ


「もう、あの日から十年ですカ」


また一つ ゆらりと揺れた
ブレイクを見れば淋しい笑顔
そして、遠くを見つめていた


「…何の日の事だ?」


キョトンと尋ねれば
一瞬、笑顔が歪んだが
また ブレイクは優しく笑った


「イエ。"こっちの話"ですヨ」


そんな笑顔に癒され 今日の辛い任務の疲れも和らげる


すると
急いでいるのかブレイクは
では。と一声発し横をすり抜けた

いつもの抱き着く行為がない事に不思議に思ったが歩き出す


そんなに急ぎの仕事であったのか


また 廊下に一人のブーツの音が暗く広がった。


(…あぁ。もうこんな時間だ)


時計を見て溜息をつく


後少しで日付が変わるじゃないか

カチャリとドアの金具が弾けた様な音をたて、パンドラ内の自室となっている部屋に入れば


「…!?」


暗闇であるにも関わらず、一目で目に付く異様な "青"


その青は白銀の髪を揺らし
ヒラリヒラリと煌めいていた


普段なら部屋に誰か居る時点で身構えるが…
このケースは何度かあった為に


その人物が一瞬で誰だか分かった


「…何か用か…エコー…?」



その言葉と共に


まるで無機質な物が
同じく無機質な物を見ている様な冷たい視線が自分と交差した


「ギルバート様…ヴィンセント様からのお手紙をお届けに参りました。」


ペコリと頭を下げ 一枚の便箋を渡された


「…ヴィンセントから…?」


「はい。では、エコーはこれで。」


便箋を見ていると急に冷たい風が頬を霞め
カーテンがけたたましい音をたて激しく暴れている


一瞬窓の下に白銀の毛先が見えた

(…?)


とりあえず 便箋を開けると
一枚の紙が入っている
カサカサと開くとヴィンセントの筆記が見えた





『親愛なるギルバートへ。


 こんばんは。
 驚かせてたらゴメンね?


 ねぇギル
 明後日は何の日か分かる?


 明後日はね、僕とギルが再会し てから丁度 十年目だよ。


 だから 明後日 それを記念して
 一緒にお茶をしようよ


 良い返事を待ってるね


       ヴィンセント 』






それは デートの誘いだった。


もう十年がたってるのか
内心、結構驚いていた


「もう…十年か」


せっかくの十年目だ。
少しぐらいお茶に付き合おうと
溜息を付いた瞬間に




何かが胸を打った





何か忘れている。何かが"ある"





「…なんだ…これ」




思い出せない



何か、しなくては ならない





心臓が脈打ちたてる



「なんだ…っけ?」



髪をくしゃりと握った





初めてナイトレイ家に足を運んだ時…









"あれは、いつだった―…?"









―――――…ドクン









思い出した。




"あれから3日後だ"




時計を見れば日付が変わる5分前


「…ちっ」


勢い良くドアノブをつかみ取る様に開け、走り出す



何故、思い出せなかったんだ



何故、忘れてたんだ



何故、あんな悲しい顔をさせてしまったんだ



息を荒上げ 壁を背後に流し込む
深夜でも関係ないと
ブーツが廊下を蹴り落とす


喉がカラカラに乾燥し
同じ乾燥した空気に吐息がコダマした


もう 何分経ったかなんて考える暇も無くて


「…ブレイクッ…!!!!」


待ってくれ。
あの日付を、あの日にちを
まだ、
今日を"過去"にしないでくれ―…


あの "雨の日" を



廊下を曲がり ブレイクの自室の前に滑り込んだ


バランスを崩したが
間髪入れずにドアノブを掴む


普段はノックをするが
無作法にのも程があるが、いきなりブレイク自室に飛び込んだ



「―――…ギルバート君っ!?」



視界の中心にいた
紅い瞳が普段より丸く 縮んだ


よほど驚いたのだろう
上着を半端に脱いで動かない


珍しく間の抜けた顔のブレイクが口をパクパクと動かした


「…ど…どうしたんです!?」


驚いた顔を無視し
自分の持っている時計を覗き込む

日付が変わる 1分前―…


「何か、私に用で―――…」


近寄って来たブレイクは
息を詰まらせた





俺の腕で きつく絞めたから




自分より小さい身体を包み込む
自分の腕は熱く抱きしめた


無言で抱きしめた俺に対し
ブレイクは小さく呟き



「…………思い出したんですネ」



背中に腕が回って来た。


そして軽く 頭を叩かれる


帰って来た言葉は震えていて


「…遅刻…寸前ですヨッ…」


「…すまん」


俺の服が小さく握られ
腕が絞められる



そう。今日は特別な日



人生の中に一人加わった日



初めてお前が視界に入った日















『…私と貴方が
            出会った日。』
『…俺とお前が















机にある時計の針が天を向き
カチリと鳴った瞬間



二人はお互い
柔らかく ゆっくりと口づけた



それは甘くて 幸せで
まるで十年を振り返る様に



もう十年。
お前は俺を支えてくれた



もう十年。
お前は俺と居てくれた



もう十年。
俺はお前を愛してた



これからも、だろうけど



もしも あの時
お前ではなくチェインと出会っていたならば…
躊躇せずに契約してたに違いない


小さな水音と共に放たれる温もり


見詰める紅い瞳には光りが宿り
それが俺の瞳に反射している様で

「…綺麗だ。」


そう言うと ブレイクは顔を紅潮させ 俺の胸に顔を埋めた


「この、ヘタレワカメめ…」


ボソッと毒を吐かれれば
怒りより笑いが出てしまい
また一つ 頭を叩かれる


「思い出してくれないかと思いましたヨ?」


いつもの勝ち気な瞳が
俺と混じ合えば、少し焦った。


まさか ヴィンセントのおかげで思い出せたなんて言える訳が無いから



「…すまなかった。」



ブレイクの額に一つ口づける



不安にさせたお詫びとして



俺からの記念品として



大好きなお前の確認として

















    「愛してる」













―…また、ブレイクを胸に沈めた










その後見た
ブレイクの気持ちに沿って動いた唇は見なかった事にしよう















   何も無い記念日を









     貴方の隣で











     貴方と共に























(そこでそんな綺麗に笑うなんて)



    (…反則だろ)












      END



うわ 何この駄文。←おい



あま…い……のか? コレ



こんな駄文で申し訳ありませんが偉大なるとらす様への相互記念でございます…



本当にごめんなさい(泣)



このゴミに等しい文体を貰っていただけたら幸いです



相互リンク
ありがとうございました!!!!!!!




…ヴィンスは、なんだかんだで
役に立つなぁ…←こら

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