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□青色の幸せ#9
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#9 答えは貴方の隣に


side 雷蔵






『はやくおいでよ!』



 ……誰かが、木の上で手を振ってる?
 でも、光のせいで姿がよく見えない。





 誰?





 手を伸ばすと、相手も近付いてくる。力を込めると、その人は僕を木の上に引き上げてくれた。



『話すのは初めてだね』



 ――違う。君の声は、どこかで聞いたような気がする。



 誰? 君は、誰?



 そう訊ねると、その人はとても綺麗に微笑んで、唇を動かす――










 瞬間、脳天に何かが落下してきた。










「不破、授業中に寝るとはなかなか度胸があるじゃないか」





 顔を上げると、笑顔で怒っている先生。しばらく黙り込んで、僕はあたりを見回す。三郎が溜め息をついて、ノートの端っこにこう書いた。



『今、授業中』



 ……えーっと。授業、授業って、何だっけ……って。


「あ……」


 ようやく状況を理解して、僕は固まる。先生は笑顔で眉間に皺を寄せた。





「あー、昨日はちゃんと寝たのにー!」
「雷蔵が居眠りするなんて、珍しいね」


 兵助にそう言われて、僕は溜め息をついた。昨日はいつも通りに寝たんだけど……。



「あのね、兵助」
「ん? 愚痴?」
「違うよ。……さっきも見たんだけどね、ここのところ同じ夢ばっかり見るんだ」



 あの男の子の夢をよく見る。でも顔は分からない。いつも出てくる直前で目覚めてしまう。
 今分かるのは、茶色の髪と同い年くらいということ。



 兵助はへぇ、と興味がありそうに寄ってきた。



「夢占いとかしてみたら? 俺、さっきその本借りてきたんだ」



 バックから出てきたのは、緑の背表紙の本。ていうか兵助、何でそんなの借りてるの?



「試して駄目なわけじゃないし、やってみるかな」
「おーおー!」



 光が差し込む木々。その頂上にいる男の子、柔らかい声。それらをすべてひっくるめた後に指し示されたページを見ると。





『答えは貴方の隣に』





 そのたった一文しかない。挿し絵さえも。やけっぱちでやってみたけど、逆にもっと深くなっちゃったみたいだ。



「隣? って俺……なわけないよなー。雷蔵の身近にあるもの、ってことか」
「ものとは限らないしね。人間とか、動物かも」



 占いを信じるわけじゃないけど、少し参考にしてみるか。



「もし兵助だったら、豆腐ってことだよね」
「は!? いやいや、そうとは思わんよっ」



 近くにいるひと、か……。
 でも考えすぎると、また授業中先生に怒られちゃうし、ここらで止めておこー……。





continue...








6〜8の路線があまり合ってる感じがしなかったので、もとに戻しました。

なんかもう展開読めますね。もう止めてしまいたいorz
けど、一応完結はさせたいです。

きっと夢に兵助が出てきたら、それはご飯のメニューが豆腐になる前兆ですよ。


2009/11/21 PM04:30
翠鈴

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