LamonedeU

□‡雪の炎と冬の薔薇‡
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赤い雫が白に一つ落ちて


その雫が細まれば


私も笑う


その白が揺れれば


私も揺れた













  ‡雪の炎と冬の薔薇‡













息が白くて 地面も白。



いつもの汚いコンクリートの黒は天からの白で中和した。



幻想的な光を放つグレー色に




「雪なんて、久しぶりですネェ」



私の視線の少し上



私と同じ色をした髪が揺れ



私と同じ色をした瞳が細まり



薄紅色のマフラーをしたお前が
ぴょんぴょんと上機嫌に歩く



「機嫌良さそうだな…ザクスは」


はぁ。と口から出た白い煙りは
ゆらりと漆黒の空に消えた



(…寒っ…)



私はマフラーを忘れた事を心から悔やんだ。



この寒さで機嫌が良いなんて私には出来ない。



ましてはマフラーを忘れた私には



仕事帰りがこんなに晩くなるなんて、誰も予想しなかったから



また一つ息を吐く。



そんな事を思っていると
前で歩いていたザクスが突然走り出し、一つの広場を指差した




「凄いですヨ!!ケビン!!」



コートの袖を振り 無邪気に招かれると
自然に小走りになる



少しバランスを崩し、ザクスの隣で止まれば



「…あぁ」



心地良い溜息が一つ漏れた



それを見た瞬間にザクスが
はしゃいだ意味が分かったからだ


そこには








「…真っ白ですネ」












黒い夜空を背景にした純白の広場


まだ 足跡なんて一つもない
目がチカチカとなる様な純白。



そんな雲の上に居るような不思議な感じを掻き消すのは



広場に立つ一つのオレンジ色の光を放つ電灯だけ



そのオレンジが丸く一つだけ純白と漆黒の境界線を繋いでいた



「一番乗りですヨ!!」



手を引っ張られたと思えば
靴の裏に雪独特の結晶が擦れる音


そして あいつ独特の笑い声



白のキャンパスを浸蝕する
黒い四つの足跡



「おい…私は寒いんだ」



「何言ってるんですカ!! こんな機会ありませんヨ」



一生いらないと思うが



手から温もりが消えると手に冷気が降り懸かる



あいつは楽しそうに広場の端まで足跡を付けに行った



「ザクス!!!転ぶから走るな!!!」


手を口に添えて叫べば
笑いながら手を振るザクス



「…全く…」



こんな時は本当に子供になる。
私は保護者か?



そんなザクスを目で追うのは



心配だからか



愛おしいからか



そんな事が私には理解出来なくて















そうボーッとしていると
当然の様に今まであった笑い声と足跡がピタリと止んだ



静寂が耳を切り裂く



「…ザクス…?」



ふと見回せば
雪の上には不自然な、薄紅色したマフラー。




そして




雪に覆いかぶさった、ザクスの
紫掛かったコートが視界に入った



それと共に紫掛かった髪も。











「―――…ザクス!?」








状況を把握する前に右足が出た



ザクザクと靴の裏で音が鳴り
冷気で顔が凍りそうに痛い。



でも ピクリとも動かない
あいつに息を切らしながら走る



私の記憶が正しければ あの周辺には花壇があったはずだ



「…大丈夫か!?!?」



もし 岩にでも頭を打っていたら



そんな不吉な事を考えれば直ぐにザクスの目の前に来た



「…ザクス!!!!!」



抱き起こせば 私と同じ瞳は閉じられていて



ひやりと自分の内側から身体が
冷えた



嘘だろ





「ザクスっ!!! ザク……!!!」




私が叫んだその時


















―――――ばしゃっ















「つっ!!!!」










急に視界が真っ白になったと思えば、顔面への衝撃に異様な冷たさ。


その冷たさで雪玉だと一瞬で理解した。



「なっ…」



顔を擦り 雪を払えば




腕の中で
にんまりと嫌らしい笑顔を浮かべ両手に雪玉を握ったザクスがいた











「ふふふ〜。まだまだ甘いですヨぉー?ケビン」










すると、ばしゃり。
また雪玉を顔に当てられた



その瞬間、腕の中から雪へと放り投げてやる



ザクスは短い悲鳴を上げてから
また小さく笑い出した



「ザクス!!!貴様、ダマしたな!!」


「えー? ダマしてませんヨー。死んだフリしただけデス」




「ふざけるな。私は寒いんだ!!」


まさか、本気で焦ったなんて言えるはずも無く



立ち上がり
雪を思い切り蹴れば
ザクスの顔面に直撃した



ぎゃー。など棒読みな悲鳴を上げ


また雪玉が飛んできたから
それを 軽く避けて また雪を蹴る


漆黒の空に純白の地面
その二つが二人の投げ合う雪玉に残像を残し、影を残した



「馬鹿ザクス!!!!」



「あハハ。当たりませんヨー」



とか ほざく口に目掛けて雪玉を投げると
的中し、ザクスが悔しそうな顔を雪から出した



うー。やら唸るもんだから笑った


寒さからか
紅く染まった頬は色っぽくて
奴の白い肌と白い髪、そして紅目とのコントラスト




嗚呼、可愛いなとか思うと
急にザクスの口が弧を描いた





「なら、こうして差し上げます」

















―――ザバッ

















そんな不気味な声を聞いた刹那
視界が白から黒に変化した



背中には冷たい雪に
目の前には夜空とザクス



腕は がっしりと捕まれて



「…寒いのだが」



マフラーの無い首筋に当たる雪は身体を震えさせた



上に乗るザクスは小さく笑うばかりで 退こうともせずに私の頬を撫でていた



くすぐったい。と身をよじれば
さぞ楽しそうに笑う



「本当にケビンは可愛いデス」



私の髪に口づけて呟いた言葉に
体温が上る



「そして、冷えている」



その後に、ぽつりと一つ落とした言葉は 私には分からなかった



冷えている? 私がか?



「美しい…けど…近付くと自分が怪我をしてしまう…」



ザクッと耳元で雪が鳴った



「一般的には炎とか薔薇に例えるでしょうけど」



私の紅い瞳に赤が広がった



「―…貴方は"雪"ですネ」










急に広がる唇の熱





火傷しそうなぐらいに熱くて





思わず目をつぶった





背中の冷たさなんて感じない程





静寂が広がり 温もりが広がった




「…ん」




熱さに慣れて目を開ければ
いつものキスとは違い長く触れるだけのキス




それだけでも心地良くて
また一度目を閉じた。





この静寂を消さない様に…―




すると
ザクスとの間に冷気が通った




遠ざかる顔に愛おしがりながら
涙目で睨み付る



「…不意打ちは禁止なはずだ」



「守った事ありませんが?」



背中に一歩の温もりが滑り込み
半ば強引に抱き起こされる



さっき私がザクスにやった様に



やっと視界に雪が入って来たと思えば、きつく抱きしめられた






「私は雪が好きです」






ザクスの顔を見れば
楽しそうな笑顔で






「でも…この温もりは貴方にしか差し上げませんから」






だけど笑顔に対して声は寂しくて





「もし溶けてしまっても」






やっぱり、私は






「全て、受け止めます…―」






ザクスに…依存してるのかな













「―…勝手にしろっ」










体温の上がった顔を見られぬ様に








ザクスに正面から抱き着いた
















溶かしても溶かしても















私は雪にでも氷にもなってやる














お前にまた溶かして欲しいから…














また 腕をきつく締めた。














この 小さく 儚くて















くだらない この幸せ
















貴方には届いてますか?



















    『愛してる』














その二人同時に放った同じ言葉は

















儚く 再び振ってきた雪を溶かす


















そんな 気がした―――…













      END













いやぁ 最近 寒いっすねー^^


うちの学校 コート着用期間が
12月だけとか どんだけ鬼畜


そんな寒い時にこんな駄文を読んで頂いてありがとうございます


そして ごめんなさい←


一応
初めは現代パロだったのに…(汗


気にしたら負けです


今だに 足跡付いてない雪見ると走り出しますが何か!?←(オイ

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