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□奈落の花
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墜ちることなきように。
―奈落の花―
(くく竹 side兵助)
―
ぐしゃり、と足元で花が潰れた。いつもなら怒るハチは、瞠目しただけで何も言わない。
森の中は、地図で見た時より広い気がした。それでもきちんと目的は達成したけれど。
学園の任務だからそんなに難しいわけではないけれど、あそこに帰るまで油断は禁物。
その瞬間まで、ハチを守る。
「兵助……」
「大丈夫だよ」
君が不安にならないように、笑う。帰ったら、花を潰したことを謝るよ、と言って。
唇を噛み締めて、一瞬だけ俯いた。
花は生き返らない。ひとも同じ。今日、俺が殺したひとは蘇らない。生物委員の君は、それを知っているから命を大切にする。
俺は、非情だから迷いなく殺す。迷っていたら、自分がやられる。だから、今日はたくさんのひとと一本の花を殺した。
ただ、それだけのこと。
『殺さなくて済むのなら』
そんなことは、この奈落の世界には通用しない。
「大丈夫だよ」
言い聞かせるように、呟く。
ハチは、この奈落の世界で咲き誇る花。
割り切れないハチを守る俺は、花を守る忍び。
出来れば、こんな場所で咲いて欲しくなかった。摘まれてしまうかもしれないこの場所に生きて欲しくない。
でもそれが運命なのだ。
散らないように。種を残さないように。絡め取られないように。
この花を、枯らさないように。
「守るよ」
突然の俺の言葉に、ハチは目を反らした。その仕草さえも愛しい。
――君は奈落の花じゃない。抜け出せば、きっと幸せになれる。でも俺は、ここにいるのが宿命。
(だからきっと、いつか離れる。だけどその日までハチを愛するよ)
奈落の世界で、純潔な愛を持って。
――花を、愛する。
I'm a knight to defend your petals...
Fin.
―
もともと拍手文にしようかと思っていたんですが、暗いかなぁ、と思ってこっちにうpしました。だから短いです。
英文は直訳で私は君の花弁を守る為の騎士、です。でも私的には騎士じゃなくて忍者なんですが忍者だとなんかこう……違うんだ!
私の英語力ではこれが限界です。こんなんで英語系のを志望してるのって…( ̄〜 ̄)ξ
ひぐらしでお馴染みの「奈落の花」をイメージして書きました。サビ部分だけですが。
うあー…次は明るいの書きます!
2009/11/15 AM00:35
翠鈴