お話(完結)

□ねがいごと
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「私の願いはあなたの幸せなのよ。」


幼いころ、優しい手が大好きだった。その手がずっと自分にあるものだと思っていた。


「…アスラン…」

この優しい声…

「…アスラン…!」

「アスラン!おきろ!!」
優しい…か?

「ア〜ス〜ラ〜ン!!!」
ゴン!

頭に強い衝撃。どうやらげんこつをもらったらしい。
「…痛いじゃないか…アスハ…」
額をさすりながら顔をあげると、金色に輝く髪に琥珀色の瞳と目があう。
「お前が起きないからだろ。ほら、委員会の用紙、」
「あ…まだ…」

「なにぃ〜」

「ゴメン…」

カガリはゆっくりとアスランの前に座る。
「どうしたんだ?お前らしくない…」
顔を覗き込まれて苦笑するしかない。

「これは俺が出しとくからアスハは帰っていいよ」

「何言ってんだ、ほんとは私が書かないといけなかったんだ。なのにお前に任せて…」

「明日、バスケの試合だろ?早く帰って体を休めて」
「大丈夫!どうせ興奮して寝れないしな!」

輝く笑顔が眩しくてアスランはうつむいた。

カリカリ…
教室で二人きり。
アスランの書く音だけが響く。
こんな時、気のきいた言葉でもあればいいのだが、残念ながらアスランには何も思いつかない。

「あ」
突然、カガリは何かを思いついたように立ち上がった。
アスランはそのまま目で追い掛けると、
「今日って七夕じゃん!」そう言うと、教室の窓を開けた。
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