お話(完結)
□シン・アスカの受難
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《シン・アスカの受難》
「あれ?お兄ちゃん、どこか出掛けるの?」
妹のマユが2階から下りてくると、兄のシンが玄関から出るところだった。
「ああ、ルナの家に…ってお前、デート?」
淡いピンク色のワンピースに身をつつむ妹の姿に、シンは内心ドキリとした。
「うん!ねぇ、一緒に行こうよ!」
「…えっ…それは…」
「いいじゃない!途中までなんだし。」
シンの心の内を知らないマユは、隣に並ぶと上機嫌で笑う。
別に妹が誰と付き合おうとも気にしない。応援する。
だが…
「どうしたの?」
高校生になったマユは最近、彼氏が出来た。
と言うより、前から付き合っていたらしいのだが、シンは気がつかなかったのだ。
「いや…別に…」
「お兄ちゃんもさっさと恋人を見つければいいのに」
痛いところをついてくる。
昔、高校生になって本当に好きになって…あの輝く笑顔は今も変わらない。
さすがに今は、失恋からは立ち直ったつもりだ。
「ルナちゃんとは仲いいのに付き合わないの?」
「ルナは彼氏いるよ。」
「そう?でも、この前…」
大学生になり、ルナは彼氏ができた。本人は友達と言っている。
そしてシンと顔を合わせるたびに言うのだ。
『あと12年して、お互い結婚してなかったら一緒になりましょ!』
「なんで12年なの?」
マユの問いに引き攣った顔で返すしかないシンだった。
その時―
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