グロッチ・ストーリー〜心の闇物語〜
□ニューオングのコータロー
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グロッチは目を開けた。
妙に日差しが強い。起き上がるとグロッチは目を疑った。目の前には一面の砂漠が広がっていたのだ。
「えっ。どこ行きゃいいの?」
グロッチは一人呟いた。そんなグロッチを容赦なく太陽が照り付けていた。
「しょうがねぇ。歩くか。」
グロッチは1人で歩き出した。テストの疲れか、はたまた足場のせいか分からないが、グロッチの足取りは重かった。
「ああ。もうだめ。死ぬ。」
そんなバテ始めたグロッチの前方に、うっすらと何かが見え始めた。
「あっ。あれは…。蜃気楼じゃん。地面から出る熱の影響で大気中で光が異常に屈折し、空中や地上に遠くの物が見えることだったな。」
だ、誰だこいつは!?グロッチか!?いやそんなはずは…。しかし、グロッチしかいない。ということは、グロッチなのか。テストの時とは大違いだ。
そんな蜃気楼の説明をいしている間に、グロッチは何かを見つけた。
「えっ!?砂漠に花が咲いてる?」
そこには砂漠なのに見事に黄色に咲き誇った花があった。とても美しい。そして、グロッチは闇雲にその花に手を伸ばした。
「ちょっと待ちや。あんさん。」
「んっ?」
グロッチは固まった。ありえない事が目の前で起こっていたから。
その後も、花は話しかけてきた。
「ちょいあにさん。もしかして…わいを採ろうしとるんちゃいますやろな。もし採るっちゅうもんなら、ええ度胸しとりますやん。なにか。あんさん、わしを食う気なん。そんなん考えてんやったら、わしらが先に食うちょるばい。」
「はっ…。花が喋ったー!しかも、足。走ってる?言葉も変。」
グロッチの目の前では花がグロッチに向かって走ってきていて、噛みつこうと牙を向けているところだった。
「みんな。でてきいや。」
その掛け声と共に、同じような花が次々と砂の中から姿を現した。
「覚悟しいやー。」
そう言って花は一斉にグロッチに襲い掛かった。
すかさず逃げるグロッチ。しかし、剣が邪魔でまともに走れない。
「なんで俺、さっきから追われてんだよ。選ばれた者なのに。」
無情な叫びは寂しく砂漠に響き渡った。