グロッチ・ストーリー〜心の闇物語〜

□町内放送
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「それでは、テストを始めてください。」


その一言が言い放たれた後、紙を裏返す音と、シャープペンシルの音が一斉に鳴り出した。ここ『ナイト・ウエストタウン』にある普通の高校では、今まさにテストが始まったばかりである。
 
 今学期の成績が今回のテストの出来で決まるので、誰もが必死になってテストを受けていた。その中でも一番必死だったのが、A2B24番の『グロッチ』であった。

 テストも無事終わり、ほとんどの人は開放感に溢れていた。ただ一人、グロッチを除いては…。

それから時は流れ、試験期間も無事終わり、終業式を済ませてあとは帰だけだった。しかし、グロッチは先生に呼ばれた。通知表もグロッチだけ渡されていなかった。


そして、グロッチが先生の所に行き、先生から下された言葉は、『追試』の二文字だった。グロッチはテストが終わった直後、追試を受けるはめになる事が分かった為、開放感に浸ることが出来なかったのだ。

 グロッチは追試を受け、なんとか赤点を免れたが、彼の成績通知票は悲惨なものだった。数日後、彼に渡された成績通知票には、理科以外は全て赤点より一つ上の数字で埋め尽くされていた。
 グロッチは理科だけ得意(?)で、いつも『5(10段階評価)』を取っていた。みんなからは「得意科目とは言えない。」と言われている。しかし、グロッチの中では、『5』を取る事はとても凄い事だと思っている。そんなものだから、『10』なんてものは神の領域となっていた。
 家に帰り、親に不吉な数字が書かれた一枚の紙を見せてみた。案の定、グロッチの家に雷が落ちた。母親に『夕食抜き』と言われ、グロッチはとぼとぼと自分の部屋に入っていった。


 グロッチはベッドに倒れ込み、ため息をついた。そして、一言呟いた。



「天文学者になりたいなー。」



無理である。こう言うのはいけないことだと思うし、努力すれば何とかなりそうな事を否定するのは嫌いである。しかし、彼は努力をしても何とかならないと思う。今の彼では…。しかし、何らかの変化が彼に起こった場合、それは実現できるものへと変わるだろう。そうだと信じたい。作者の気持ちです。
 グロッチの願望は、まだ誰にも言っていない。言える訳がない。恥ずかしいのもあるし、みんなに馬鹿にされるのが目に見えていたからである。

 グロッチはその願望を口にした後、何も言わずに眠りについた。
 次の日の冬休み初日、グロッチが窓を開けると、グロッチの運命、もしくは人生を変えるであろう放送が町中に流れていた。
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