『琥珀の露・上巻』
□第五章〜それぞれの役割〜
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気になって、私は教室を飛び出した。先程朔夜を見かけた場所に行ってみたが彼の姿は無い。
どこに行ったのだろう。
少し考えて、校舎裏に行ってみることにした。
あそこにある藤棚のベンチは三妖のお気に入りだ。
放課後にも行くのかどうかは知らなかったが、いなければ諦めて戻ればいいだけだ。
校舎の角を曲がったところで、声が聞こえてきた。
「なんで、来たんや?」
晴海の声はいつもと違い、憂(うれ)いを帯びている。
「いけなかった?」
朔夜はいつも通りの笑みを浮かべて言うが、彼の雰囲気もいつもと違うように感じた。
いつも通りの微笑みの下に、いつもと違う感情を秘めているような。
けれどそれを決して晴海には見せまいと、表に出さないようにしているような。