『緋色の欠片』
□一度目の悲劇
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社(やしろ)の中。
目の前にいるのは、代々私に仕えてくれている宇賀谷家の幼い少女。
巫女の素質を持つ、人間の娘。
自身の掌を小刀で傷つけ、血を流す。
その手を同じく血を流す少女の手に重ねた。
自身の中に流れる血と共に、玉依姫としての力を少女に流し込む。
「姫さま。手が熱い……」
「もう少しです」
手を離す。
これで私が居なくなっても、玉依姫の力を継いだこの少女が封印を護っていってくれるだろう。
後ろに控えていた少年に、私は告げる。
「これからは彼女を護って下さい」
ずっと私を護ってきた犬戒の一族の少年が、驚きに目を見張る。
「僕の役目は、玉依姫様を護ることです」
「今日からは、彼女が玉依姫です。……お願いしますね」
そして私は、再び封印を施す為に命を捧げた。
その後、自責の念に駆られたあの方の血族が、半神の玉依姫を護る二人目の守護者となった。
(完)