『翡翠の欠片』

□第八章〜守護者〜
2ページ/15ページ


「私だって強いわけじゃないんだよ? ……ただね、これだけはいつも思ってる。『強くありたい』って」

 珠紀が真っ直ぐに珠洲を見る。

「私の中には、弱虫な私が居て、臆病な私が居て、泣き虫な私が居る。それでも、護りたいと思うものを護れるように。大切な人の隣に、胸を張って立って居られるように。その人の、力になれるように。私は強くありたい。
そう、いつでも願ってる」

 柔らかな笑顔を浮かべた珠紀が、珠洲の頭を撫でる。

「願うこと、そして想うことはね。とても大切なことで、強くなることの第一歩だと思う。それが出来てる珠洲ちゃんは、多分大丈夫だよ」

「でも、私は……」

「それから、あと一つ。決して諦めないこと。一度信じると決めたなら、最後まで信じて貫いて。そしたらきっと、素敵な未来が待ってるよ」

 未来。
 そんな言葉を聞いたのは久しぶりな気がした。

 豊玉姫のこと。
生贄のこと。
厄災のこと。

 最近は色々なことがあり過ぎて、それらから連想できる未来は、暗いものばかりで。

「私は同じ玉依姫なんだよ? 経験者が言うんだから大丈夫。だから信じて。私を、そして自分自身を」

「自分を信じる……」

「そう。信じればきっと、貴女の中に流れる血は、貴女の想いに応えてくれるから」

 珠洲の中に流れる玉依姫の血。

 それを使いこなすことが出来れば、確かに珠洲は強くなれるだろう。

「返事は?」
「はい。私、頑張ります」

「よしよし。じゃあ寝ようか。夜更かしは身体に悪いしね」

「相談に乗ってくれてありがとうございました」

「どういたしまして。おやすみ」

 並んで横になり、二人の玉依姫は眠りについた。


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ