『翡翠の欠片』
□第八章〜守護者〜
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「私だって強いわけじゃないんだよ? ……ただね、これだけはいつも思ってる。『強くありたい』って」
珠紀が真っ直ぐに珠洲を見る。
「私の中には、弱虫な私が居て、臆病な私が居て、泣き虫な私が居る。それでも、護りたいと思うものを護れるように。大切な人の隣に、胸を張って立って居られるように。その人の、力になれるように。私は強くありたい。
そう、いつでも願ってる」
柔らかな笑顔を浮かべた珠紀が、珠洲の頭を撫でる。
「願うこと、そして想うことはね。とても大切なことで、強くなることの第一歩だと思う。それが出来てる珠洲ちゃんは、多分大丈夫だよ」
「でも、私は……」
「それから、あと一つ。決して諦めないこと。一度信じると決めたなら、最後まで信じて貫いて。そしたらきっと、素敵な未来が待ってるよ」
未来。
そんな言葉を聞いたのは久しぶりな気がした。
豊玉姫のこと。
生贄のこと。
厄災のこと。
最近は色々なことがあり過ぎて、それらから連想できる未来は、暗いものばかりで。
「私は同じ玉依姫なんだよ? 経験者が言うんだから大丈夫。だから信じて。私を、そして自分自身を」
「自分を信じる……」
「そう。信じればきっと、貴女の中に流れる血は、貴女の想いに応えてくれるから」
珠洲の中に流れる玉依姫の血。
それを使いこなすことが出来れば、確かに珠洲は強くなれるだろう。
「返事は?」
「はい。私、頑張ります」
「よしよし。じゃあ寝ようか。夜更かしは身体に悪いしね」
「相談に乗ってくれてありがとうございました」
「どういたしまして。おやすみ」
並んで横になり、二人の玉依姫は眠りについた。