『翡翠の欠片』
□第七章〜兄弟〜
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「克彦さん、待っていてくれたんですか?」
「一応守護者だからな」
放課後、珠洲が玄関に行くと克彦が待っていた。
小太郎の姿は無い。
「小太郎君はどうしたんですか?」
「用事があるらしい。こんな状況だというのに、まったく……」
呆れたように溜め息をつく克彦を見て、珠洲は笑う。
「小太郎君らしいですね」
「まあな。行くぞ」
「はい」
玄関を出ようとしたところですれ違った生徒達が、珠洲を見てあからさまに避けていった。
珠洲は小さく溜め息をつく。
生徒達はすれ違った後も、珠洲の姿を盗み見てこそこそと話をしている。
あの子の傍に寄ると危険。
玉依姫なのに厄災を鎮められない無能者。
そんな言葉が聞こえるような気がした。
「おい、言いたいことがあるならはっきり言ったらどうだ?」
氷のような冷ややかな声。
克彦が鋭い視線で睨みつけると生徒達はそそくさと逃げて行った。