『翡翠の欠片』
□第五章〜伝承〜
2ページ/12ページ
「勾玉のこととか、豊玉姫のこととか、私達は知らないことが多過ぎるから、調べてみたらどうかと思って。知れば何か対策が見つかるかも知れないし」
「知らないことを知ろうとするのは良いことだけどね。一人で動くのは危険だよ」
そう珠洲を諭した亮二が壬生兄弟に視線を向ける。
「頼みがあるんだけど、いいかな?」
「……なんだ?」
「見ての通り、僕達は満身創痍だ。君達は強いし、比較的傷も浅い、だから君達に彼女の護衛をしてもらいたい」
亮二の唐突な提案に、皆が驚く。
晶、陸、そして何故かエリカが不満そうに亮二を睨むが、反論が出来ない。
自分達では実力不足であることを、知っているから。
「随分、直球だな」
呆れたように克彦が言う。
「今は緊急事態だからね。形振りかまってはいられない。出来ることなら僕が護ってあげたいけれど、昨日の戦いでこの様だ。彼女を護ることを最優先に考えれば、君達に頼むのは当然の結論だよ」
「……ふん、仕方ないな」
その返答に珠洲は驚く。
昨夜のことで、珠洲は克彦の考えていることが分からなくなった。
だから、護衛を引き受けてくれたことは本当に驚きだった。