『翡翠の欠片』
□第三章〜発現〜
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「克彦さん、そんな言い方しないで下さい」
「事実だ。力の無い守護者に意味など無い」
「だったら、壬生先輩にはそいつを護れると言うのか?」
「……」
克彦は無言だった。
カミを説得した時といい、御子柴を退けた札といい、彼に守護者に匹敵するだけの力があることは明白だ。
だが、彼には珠洲を護る理由が無い。
実力はともかく、克彦は珠洲を護ることを断るだろう。
珠洲はそう思ったが、彼は即座にそれを言わなかった。
克彦の性格ならば即座に断るだろうに、彼は無言だった。
その無言を、肯定と受け取った晶が踵をかえしてその場から去る。
「晶!」
追いかけようとする珠洲を陸が止めた。
「俺が追いかけるから、姉さんは壬生先輩達と一緒に先に帰ってくれ」
陸が晶を追って消えると、後には壬生兄弟と珠洲が残された。
「まあいいや。ねーちゃん、今日も一緒に帰ろうよ」
黙って成り行きを見ていた小太郎が気を取り直すように珠洲に話しかける。
「まったく、迷惑だな」
「ごめんなさい」
克彦の言葉に珠洲は咄嗟に謝る。
だが、それなら何故、先程即座に断らなかったのか。
そんな疑問を抱えたまま、珠洲は壬生兄弟と共に帰路についた。