『異能のトリオ』
□その3
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異界帰りで具合を悪くしているかと思えば、ピンピンしていて空腹を訴える。
師走の手当てがあってこそのこととは言え、この元気さと呑気さは威社狐ならではだろう。
「何がだ?」
「いや、別にいいよ。それより早く着替えたら」
着替えを済ませた威社狐と咲人は部屋を移動する。
辿り着いた八畳の和室の縁側は開け放たれ、美しい庭園が見る者の心を和ませた。
「起きたのか。身体の具合はどうだ?」
威社狐達を迎えた師走が言う。濃紺の着流しで縁側に立つ師走の姿は一服の絵のようだった。
「ちょっとだりぃだけだ。あと腹が減った」
「お前らしいな」
師走は苦笑して、二人に座るように促した。
「お前んち広いんだな。迷子になりそうだ」
「迷子になったフリをして色々探ろうとしても無駄だからな」
「あ、ばれたか」
反省の色など全く無い顔で笑う威社狐。
「随分仲良くなったよね」
「そうだろ」
「慣れてきただけだ」
「いいことじゃないか」と、縁側から第三者の声が割り込む。
長い白髪を一つにまとめた、全体的に色素の薄い人物だった。