『琥珀の露・短編』

□妖猫覚醒
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●○●

 目が覚めた。

 心臓が早鐘を打ち、呼吸は乱れている。
 瞬きすると、目尻から涙が滑り落ちた。

「どうして……」

 沢山の人が泣いていた。
 最近、毎日毎日その夢を見る。

 いや、夢だけじゃなかった。
 ふとした拍子に脳裏に浮かぶ。

 まるで、過去のことを思い出すように。
 まるで、それが自分の記憶であるかのように。

「どうしたの?颯。……泣いてるの?」
「母さん」

 夢の話をすると、母さんの顔つきが変わった。

 何ともいえない表情で俺を見て、小さく呟く。

「覚醒が、近いのね」

 そう聞こえた。
 それが、どういう意味なのか。

 問うのが何故か怖くて、俺は言葉を呑み込んだ。


 
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