『琥珀の露・短編』
□妖猫覚醒
2ページ/6ページ
●○●
目が覚めた。
心臓が早鐘を打ち、呼吸は乱れている。
瞬きすると、目尻から涙が滑り落ちた。
「どうして……」
沢山の人が泣いていた。
最近、毎日毎日その夢を見る。
いや、夢だけじゃなかった。
ふとした拍子に脳裏に浮かぶ。
まるで、過去のことを思い出すように。
まるで、それが自分の記憶であるかのように。
「どうしたの?颯。……泣いてるの?」
「母さん」
夢の話をすると、母さんの顔つきが変わった。
何ともいえない表情で俺を見て、小さく呟く。
「覚醒が、近いのね」
そう聞こえた。
それが、どういう意味なのか。
問うのが何故か怖くて、俺は言葉を呑み込んだ。