『琥珀の露・下巻』

□終章〜五月晴れ〜
1ページ/7ページ


 五月の始め、大型連休の二日目は見事な五月晴れだった。

 心地良い天気に誘われるように、私は家を出る。

 封印を築きなおした後、この村にはいつも通りの平穏が戻っていた。

 雷洸はこの地を去った。
 私達に封印を任せて。

「志穂ちゃん、散歩?」

 前から晴海と朔夜が歩いてくる。

「ひとりで出歩くくらいなら、声かけてくれたらええのに」

「日中とはいえ、用心は怠るべきではないよ。玉依の巫女」

 二人は言うが、今のこの村がさほど危険ではないことは彼らも承知している。

 築きなおした封印は前より強固なものとなり、村に住まう妖の数は以前より減っていた。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ