『琥珀の露・下巻』
□第九章〜玉依の巫女〜
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何かが起こる。確信にも似た予感を抱いたまま、私はその日、眠りに落ちた。
そしてまた、桜の夢を見る。
封印の巫女は私を見つめ微笑んだ。
神に恋をし結ばれた、人間の巫女。
哀しい最期を迎え、今も湖に眠る玉依姫が。
「私、巫女になりたいんです。三妖の力になりたい……」
どうすれば、彼らの力になれるのか。
どうすれば、彼らを死なせずにすむのか。
巫女が近づいてくる。
「手を……」
言われるままに、右手を差し出した。
巫女の手が私の手に重ねられる。
掌が淡い光に包まれ、すぐに消えた。
「それを三妖に」
ほのかに熱を帯びた掌には何もない。けれど、暖かい何かが確かに手の内にあった。
「これは……」
「私が封印を築く折に、三妖から預かったものです。あなたは三妖の力になりたいのですね?」
「ならば」と巫女は続ける。