『琥珀の露・下巻』
□第七章〜真実〜
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恐怖心よりも焦りのほうが強く、躊躇いもせずに雑木林へと足を踏み入れる。
雑木林の中を走りながら、様子がおかしいことに気付いた。
普段は様々な妖の気配で溢れていたこの場所が、今は何の気配も無い。
全てのモノがこの奥で行われていることを息を潜めて見守っているようだった。
贄の儀。
なぜもっと速く走れないのか、もどかしい。
息を切らせながらようやく雑木林の終わりにさしかかった所で、私の耳に轟音が届いた。
何かが弾ける様な音に続いて、水しぶきの上がる音。
「なに?」
儀式というからにはもっと厳粛(げんしゅく)なものなのではないだろうか。
轟音(ごうおん)の正体のつかめぬまま湖にたどり着いた私の目に映ったのは、三妖とそれに対峙する雷洸の姿だった。
入り乱れて戦う四人を見つめ、朔夜が生きていることに安堵する。