『琥珀の露・上巻』
□第二章〜不穏な影〜
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「志穂ちゃん、お友達が来たみたいよ」
「はい、すぐ行きます」
「もうお友達ができたのねえ。良かったわ」そう言う静子の見送りを受けて私は家を出た。
今日は日曜日。
晴海の提案でこの村を案内してもらうことになっている。
「おはようございます」
「おはよーさん」
「おはよう」
「あれ、颯君はまだですか?」
きょろきょろと周辺を見回すが、黒髪の少年は見当たらない。
「あいつは遅刻や。後で追いついて来るやろ」
「颯は朝に弱いんだよ」
「え? でも、学校には遅刻せずに来てますよ」
彼らに護衛をしてもらうことになった日から、颯は毎朝私を迎えに来てくれる。
颯にしてみれば通学路の途中に私の家があるだけのことで、迎えに行くというより途中で拾っていくという感覚のほうが強いのではないかと思うが。
「それは志穂ちゃんが来てからの話だよ。それまでは三日に一回の割合で遅刻してたし」
「二日に一回やろ?」
ならば、颯は護衛のために早起きするようになったのだろうか。