『緋色の欠片』
□二度目の悲劇
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◎玉依姫
結界の揺らぎを感知した私は、守護者である鬼崎と犬戒を連れて、森に向かった。
森に居たのは深い傷を負った妖狐。
人型でありながら獣の耳と四本の尾を持つ、美しい顔立ちの青年。
綺麗な白い毛並みは、血で斑に汚れていた。
意識は無く、大木の根元にうずくまるように倒れている。
「どうなさいますか?」
今の状態ならば退治することは容易い。
だが、私は首を横に振った。
「彼は邪悪な者ではありません。社に運んで下さい」
「……承知しました」