『翡翠の欠片』
□第九章〜異なる強さ〜
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四人は日のある内に山を下り、高千穂家に戻って来た。
沙那、加奈、陸が出迎え、珠洲の無事に安堵し、珠紀と祐一の来訪に驚いた。
「克彦君、今日は随分不機嫌ね」
珠紀の言葉に、珠洲は頷く。
確かに、今日の克彦は昨日以上に不機嫌だった。
苛立っている、と言った方が良いかもしれない。
「祐一先輩、昨夜克彦君と何かあったんですか?」
「……さあな」
祐一は何かを知っているようだが、答えようとしない。
「直接本人に聞いてみたらどうだ?」
珠洲に視線を向けて、祐一が言う。
「そうしてみます」
朝から克彦の様子が気になっていた珠洲は素直に頷き、克彦を探す為に部屋から出る。
夕暮れの中、家のすぐ近くの道に佇む克彦の姿があった。
世界が暖かな色に染まる中、その青い眼だけは冷たい色を変えない。
「克彦さん」
珠洲が呼びかけると、克彦は僅かに視線を向けるが、すぐに逸らしてしまう。