『翡翠の欠片』
□第八章〜守護者〜
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「お帰りなさい、珠洲ちゃん。そろそろ寝ましょうか?」
「はい」
「浮かない顔ね。何かあった? お姉さんが相談に乗っちゃうぞー?」
冗談めかして言われ、珠洲は笑う。
明るくて、前向きで、祐一と凄く仲が良くて、同じ玉依姫の名を持っていても、珠洲と珠紀は全然違う。
「どうしたら、強くなれるんでしょうか?」
珠紀の傍に座り、珠洲は言った。
強くなりたい。
これほど強く願うのは初めてのことだった。
今までも玉依姫として修行をし、強くならなければならないとは思っていた。
私は玉依姫だから、強くならなければならないと。
でも、今は違った。
強くならなければならないのでは無い。
強くなりたい。
初めて自分の意思で、強くなりたいと思った。
『……あいつの目を覚ますのは、兄としての俺の役目だ。他の誰かに譲る気は無い』
宝具の使えないこの状況で、それでもそう言い放った克彦。
その強さが眩しくて。
羨ましくて。
強くなりたい。
自分とって大切なものが、ちゃんと自分の手で護れるように。
守護者に護られるだけじゃなく、彼らの力になれるように。
「私は弱くて。玉依姫としても未熟で、守護者に護られてばかりで……。どうしたら、珠紀さんみたいに強くなれるんでしょうか?」
それを聞いた珠紀は苦笑する。