『翡翠の欠片』
□第六章〜離別〜
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昼休み、司書室に一番乗りしたのは珠洲だった。
まだ誰も来ていない。
「やあ、珠洲ちゃん」
珠洲を出迎えた亮二が、じっと見つめてくる。
「貴女は、知ってしまったね?」
亮二の表情が哀しみに沈む。
生贄のことを言っているのだと珠洲にはすぐに分かった。
「はい」
「出来れば、知ってもらいたくなかったよ」
亮二はいつから知っていたのだろう。
最近なのだろうか。それとも、彩子が死んだ時なのだろうか。
「いいえ、これは知らなくちゃいけないことなんです。私は玉依姫です。だから、この事を知って……お母さんのように宿命を受け入れる必要があるんです」
意を決して珠洲は答える。
昨日一晩考えた事だった。
生贄になることを受け入れる。
それが、玉依姫としての役目を果たすこと。
それが、皆を護るために必要なこと。
だから、受け入れなければならない。
そう珠洲は心を決めた。
「それは、生贄になるということか?」
唐突に声が響き、壬生兄弟が部屋に入ってくる。