『翡翠の欠片』

□第六章〜離別〜
1ページ/13ページ


●○●

 昼休み、司書室に一番乗りしたのは珠洲だった。

 まだ誰も来ていない。

「やあ、珠洲ちゃん」

 珠洲を出迎えた亮二が、じっと見つめてくる。

「貴女は、知ってしまったね?」

 亮二の表情が哀しみに沈む。

 生贄のことを言っているのだと珠洲にはすぐに分かった。

「はい」
「出来れば、知ってもらいたくなかったよ」

 亮二はいつから知っていたのだろう。

 最近なのだろうか。それとも、彩子が死んだ時なのだろうか。

「いいえ、これは知らなくちゃいけないことなんです。私は玉依姫です。だから、この事を知って……お母さんのように宿命を受け入れる必要があるんです」

 意を決して珠洲は答える。
 昨日一晩考えた事だった。

 生贄になることを受け入れる。
 それが、玉依姫としての役目を果たすこと。

 それが、皆を護るために必要なこと。
 だから、受け入れなければならない。

 そう珠洲は心を決めた。

「それは、生贄になるということか?」

 唐突に声が響き、壬生兄弟が部屋に入ってくる。


 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ