『翡翠の欠片』
□第五章〜伝承〜
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昨夜、あれだけの怪我を負ったにも関わらず、翌日も全員が登校していた。
珠洲が体調を訊ねても、皆大丈夫の一点張り。
辛そうにしているのに。
昼休み、司書室は静まりかえっていた。
今日はエリカと保典も口を開かない為、本当に無音だ。
張り詰めた空気の中で、珠洲はこっそり溜め息をつく。
これから、どうなってしまうのだろう。
ずっと玉依姫に仕えている沙那と加奈も、豊玉姫ことについて知らないらしい。
沙那と加奈にとっても真緒が豊玉姫となって現われたことは衝撃だったようで、昨日は家に帰ってからも大変だった。
豊玉姫の怨念を封じたという勾玉。
勾玉の存在自体は、珠洲も聞き知ってはいた。
だが、実際に見たことはないし、龍神を封じた神具ということしか知らない。
それは今、何処にあるのだろう。
「あの、提案なんだけど……」
珠洲が口を開くと、全員の視線が集まる。
「勾玉について調べようと思うんだけど、どうかな?」
「いきなりどうしたんだ?」
晶の問いに珠洲は答える。