『翡翠の欠片』
□第九章〜真実〜
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四人は日中に山を降り、典薬寮の事務所に向かった。
高千穂家は天野家の命令により村人達に見張られている危険性があった為、天野家の力の及ばぬ場所を考えた結果が典薬寮の事務所だったのだ。
晶がここに居れば盛大に顔を顰めているに違いないと珠洲は思う。
四人を出迎えた保典とエリカは、珠洲の無事を確認して安堵の表情を浮かべた。
「無事でよかったよ」
「本当に。壬生克彦が村についたと聞いた時にはどうなることかと思ったわ」
じろっとエリカが小太郎を睨む。
「それで? その裏切り者の弟君は何の目的でここにいるのかしら?」
「なんだとっ」
「止めて、エリカ。小太郎君は私を護ってくれてるんだから」
暫し小太郎と睨み合いをしていたエリカが、ふうっと息を吐いて睨み合いを止める。
「まあ、弟君のほうは腹芸が出来るタイプじゃないものね。信じてあげるわ」
「村の様子はどうなんだ?」
真弘の問いに、保典が答える。
「村の大人達が彼女を探してるよ。高千穂家にも見張りがついてる。
ここに来たのは正解だったね」