『翡翠の欠片』
□第七章〜家族〜
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学校から帰ると家の中は静まり返っていた。
「母ちゃん?」
居るはずの母を呼び、小太郎は廊下を進み居間へと足を踏み入れる。
居間の中、母は背を向け、僅かに肩を震わせていた。
泣いていた。
「母ちゃん、どうしたんだよ?」
焦って母の横にまわり、問いかける。
「……なんでもないわ。お帰り、小太郎」
母は小太郎の姿を確認すると、取り繕うように笑顔を浮かべた。
弱弱しい、無理しているのが丸分かりの笑顔。
あまり鋭くない小太郎でもひと目で分かる作り笑顔。
「なんでもないことないだろ? どうしたんだよ?」
心配し、重ねて問いかけるが母は無言で首を横に振った。
小太郎に話すつもりは無いらしい。
ただ、その母の手には一枚の写真が握られていた。
写っているのは小太郎と同じ、青い眼と銀髪をもつ男性。
兄の克彦によく似た面差しの、小太郎の父だった。