『異能のトリオ』
□その1
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遥か昔、中国から日本に巫壷(ふこ)道が伝えられた。それを基(もと)として、日本では二つの流派が生まれた。二つの流派は表と裏に分かれ、裏は決して歴史の表舞台に出ることは無かった。
表の流派は、陰陽道。
それを影から支えた裏の流派の使い手を、魔屠師(まとし)という。
道を開き血族以外も取り入れて繁栄した陰陽道と違い、魔屠師は血族のみに術を受け継いでいったため、多くの者の道とはなりえなかった。
暦の作成や天候の予測、祈祷を担当していた陰陽師達の影で、妖怪退治などのより実践的で危険な役割を担ってきた魔屠師の一族。
その名は時空間(ときま)。
その一族の跡取りとして、時空間師走(ときましわす)は生まれた。
自らを取り巻く環境に不満など無かった。
普通の人間との間に距離はできたが、自分のおかれた立場、抱える秘密のことを考えればそれは必然なのだろうと思っていた。
だから、そのことに疑問を抱くことすら、彼は無かったのだ。