『琥珀の露・短編』
□水を操る者
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「朔夜先輩」
「なに? 志穂ちゃん」
穏やかな笑みを浮かべた朔夜が答える。
「朔夜先輩は妖狐の血を引いてるんですよね?」
「そうだけど……今更どうしたの?」
「妖狐っていったら、狐火が使えるんじゃないかと思って」
妖狐と聞いて真っ先に思い浮かんだのは、青白い狐火だった。
でも、朔夜が水の槍を作り出したところは見たことがあるが、炎を使っているところは見たことがない。
「ああ、そういうこと」
朔夜が笑って右手を掲げる。
「僕の能力は水を操るものだよ。
もっとも水を自由自在に動かすほどの力は無いから、水を槍の形に固定させていつも使ってるけどね」
その手の上に小さな水の塊がふわりと出現した。
「ほら、この通り。期待に応えられなくて残念だけど、狐火は僕には使えないんだよ」
「いえ、ちょっと訊いてみたかっただけですから、気にしないで下さい」
「志穂ちゃんが疑問に思う気持ちも分かるけどね。
……ねえ、狐の嫁入りって知ってる?」