『翡翠の欠片』
□第八章〜守護者〜
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隣の部屋から小さな話し声が聞こえてきたのを聞いて、祐一は克彦を外へ連れ出した。
「女性同士の会話は、聞かれたくないだろうからな。ついでに見回りもしておこう」
そう言った祐一は寺の周辺をゆっくりと見回り始める。
「祐一さん」
「なんだ?」
「教えて貰いたい事がある。貴方の村でも、生贄が必要になったと聞いたが、本当なのか?」
「本当だ。世界を破滅に導く刀、鬼切丸の封印を敵に破られた時、再び封印を築く為に珠紀が生贄になることが必要だと聞かされた」
同じ玉依姫。
伝承が違えど、背負う運命は似るのだろうか。
「それでも、彼女は生贄を受け入れなかったんだな」
生贄の話を聞かされ、素直にそれを受け入れようとした珠洲。
だが、珠紀は違うのだろうと思い、克彦は訊く。
「いや。珠紀は死ぬつもりだった」
「どういうことだ?」
「世界を護る為に、皆の為に、生贄になると彼女は言った。だが俺は、それを受け入れることは出来なかった」
その理由は訊かなくとも分かった。
祐一は珠紀を想っている。
だから、死なせることなど出来なかったのだろう。