『異能のトリオ』
□その3
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威社狐が目を覚ますと、見慣れない天井があった。
「どこだ? ここ」
「師走の家だよ」
答えたのはちょうど部屋に入ってきた咲人だ。
「咲人、ってことは、戻ってきたのか」
子鬼を殴り飛ばしたところまでは覚えていたがその後の記憶が無い。
「そうだよ、お帰り。ほんと威社狐は馬鹿だよね」
「いきなり馬鹿呼ばわりされる覚えは無いぞ」
威社狐は身体を起こして反論する。
妙に気だるい。
「なんか、だりぃな」
「異界の瘴気に当てられたんだよ。師走がちゃんと浄化してくれてたから、少し休めば良くなると思うけど」
「ふうん」
服は浴衣に着替えさせられていて、腕にはきちんと包帯が巻かれている。
「あの後、どうなったんだ?」
「戻ってきた直後に威社狐は意識を失ったんだよ。それで、傷の手当もしなくちゃいけなかったから、師走の家にお邪魔することになったの。これは威社狐の服ね」
咲人が洗濯されて綺麗にたたまれた服を差し出す。
「昼食の用意をしてくれてるから、食べられるなら威社狐も来なよ」
「行く行く。腹減ったからな」
「……ほんと威社狐って面白いよね」