『異能のトリオ』
□その2
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「人聞きが悪いなぁ。危なくなったらちゃんと助けに行くよ」
「俺らの出番が無かったらどうするつもりなんだ?」
つまり、師走一人の力で問題が解決してしまったら。
「その時はそれでいいじゃない。めでたし、めでたし」
「俺は良くない。あの人を見下したような冷めた面した奴の言うとおりになるなんて」
威社狐の中で燃える敵対意識は、当分鎮火しそうにない。咲人は苦笑して言う。
「多分、そう簡単にはいかないよ」
「どういうことだ?」
「魔物と敵対するときは、予想外のトラブルがよく起きるものなんだよ、威社狐」
威社狐がふんと鼻を鳴らす。
「へ〜、さすが、魔女の言うことは違うねぇ」
「女じゃないってば。わざと言ってるでしょ」
頬を膨らませた咲人の口を、唐突に威社狐が塞ぐ。
「ストップ」
パシャッと微かな足音が暗闇に響いた。
「やっとお出ましだ」
昨日と同じ黒い上下の師走は、二人に気付くことなく科学室の中へと入って行った。