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□罪と共に、君と共に生きていく
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 大人びた彼女は以前のように笑うことが少なくなった。
 異界での出来事、それが彼女の心を苦しめているのだ。
「オレが言うのはおかしいけどさ、なぁ十代」
「……なんだよ」
 大切なことを伝えたい。苦しんでいる彼女の心を救える言葉ではないけれど、大切な、自分の言葉を。


「愛してる」


 少女が微かに動いた。何かを言おうとして、だけれどそれは音にならず唇だけが動く。
『ヨハン』
 唇は彼の名前を刻んだ。
「愛してる、十代。お前が苦しむ原因を作ったオレが言うべきことじゃないんだってわかってるけど、でもお前は……オレが守りたい。好きだ、愛してる」
 少女は瞳を瞬かせた。ゆるゆると目尻に涙が溜まっていく。彼女はやがて顔を歪ませた。
「違う、ヨハンのせいじゃない」
 叫ぶように言って、涙を零す。
「全部オレが、悪いんだ」
「十代」
 ユベルを宇宙に放ち、光の波動を受けさせてしまった。それが全ての始まりだったのだと。少女は嗚咽を漏らした。
「十代」
 あやすように彼女の背中を撫でる。少女は泣こうとはしなかったがそれでも涙で視界は歪んでいた。
「お前は何もかも背負うつもりなんだな」
 細い身体を引き寄せる。抱きしめた身体はすぐに壊れてしまいそうで、儚い。
 頭を撫でてやると彼女はヨハンの肩に顎を乗せ、ぎゅう、とヨハンの背中に両手を回した。
「ヨハンがいなくなったりしたのも、全部」
「……」
 こんなにも彼女は弱い。それなのに彼女は強がりで、弱さを見せない。だから守りたい。強く唇を噛み締める。
「愛さなくてもいいんだ。傍にいてくれるだけでいい」
「いや、オレは十代を愛する。そしてずっと傍にいる」
 ヨハン、と声に出さず彼女は呼んだ。
「十代には笑っててほしいよ。罪を背負って生き続けるお前でも笑っててほしい」
 太陽のような明るい笑顔。いつも彼女は笑っていて、皆の心を溶かした。だが今、彼女は大人になっていろんな物を失って、笑顔さえも失くした。罪を負う者として生きることを選んで、笑うことをやめた。それでも。
「笑ってほしい」
 彼女の笑顔は頑なな心さえも溶かして、彼女のデュエルは人々を勇気付けたりした。彼女に救われた人は多い。沢山の罪を、その笑顔で誰かの手を掴み引っ張ることで償えるはずだと思うから。
「ヨハン」
「なぁ十代、返事を教えてくれ」
 罪を背負う少女の傍にいて、彼女を支えたい。
「オレ、……私」
 彼女は瞳を閉じた。答えはNOでもいい。抱きしめる力を強める。
「いいのかな。誰かを愛しても、本当に、いいのか?」
「オレは許す。お前と一緒に罪を被る。だから一緒に罪を償おう」
 十代の瞳から涙が溢れた。背中に回していた腕をゆっくりと首へと回す。彼女はそこでようやく笑った。涙で綺麗に彩られたあどけない少女の笑顔は儚くも綺麗だった。
「私もヨハンが好き。ヨハンがいなくちゃダメなんだ」
「……十代!」
 ヨハンが十代の頬に手を添えると、彼女は女の顔で微笑んだ。ゆっくりと、唇を重ね合わせる。甘かった。


 共に生きると誓う。
 だから一緒に、誰かに手を差し伸べてながら生きていこう。




―END―

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