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□君との距離感
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君との距離感
彼女にとっての親友。それが自分の位置だ。
明るい太陽のような笑顔は人を引き寄せてしまい、彼女の周りはいつも騒がしいものだった。夜になれば独り占めだってできる。そうは思っても自分の内側は嫉妬ばかりだ。
名前を呼ばれたので笑ってやると、彼女も笑って手を振る。勢いをつけてこちらに駆け寄る姿は活発でお転婆な美少女にも映る。周りの生徒たちにとって十代は憧れの存在らしく、羨ましげにこちらを見ているのを感じた。
だが、彼らは十代の秘密を知らない。周りの仲間たちさえ、十代の秘密をしらないのだ。
彼女は自分が女の子だということを周りに隠していた。
なぜ性別を偽るのかと聞くと、彼女は困った表情で考えこんでしまった。自分でもわからないのかもしれない。
何故自分にだけそれを明かしたのか。それにも彼女は困った表情で考えこんでしまった。なんとなくだったのかもしれない。
彼女の秘密を自分だけが知れたことはひどく嬉しくて、二人だけの秘密を共有できる喜びをじっくりと噛み締めた。
「ヨハン、またオレの部屋に来いよ! デュエルしょうぜ」
ただ、何も進展することはないのがちょっとばかり苦しいのだが。
「いいぜ、そうだ。今日は新しいパックの発売日だったよな」
「お、そうだった」
嬉しそうにしている彼女を見ているとそれさえもどうでもよくなってしまう。
今はこの距離感を大事にしたい。
親友という位置でさえ、きっと特別な位置なのだから。
――END――