Doflamingo
□言葉にならない形
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「名無しさん」
愛しいその名と共に、慈しむ様にその身体を腕の中へ納めた。
名無しさんはびくりと身体を震わせ、振り返り肩越しに皿の様に丸い目をおれへ向ける。
「、ドンキホーテ様…」
「フフフッ」
そっとその可愛らしい口を手で覆っては、腰に回した腕の力を強めるとおれたちの間には寸分の隙間も無くなる。
「んぅ…!?」
「フフフフ」
自分の置かれた現状を理解しきれず呆然と固まる名無しさんをよそに、おれはぎゅうぎゅうと更に腕の力を強めていく。
するとさすがに苦しくなって来たのか、あてど無く宙をかく手。それは名無しさんの精一杯の抵抗。
その申し訳程度の抵抗に口に当てがっていた手を離してやれば、先程と同じ様に真ん丸に見開いた目が向けられる。
「、っ…な、にを……」
「可愛い口で可愛くない事をいうもんだからついな」
ついガキみたいに名無しさんを困らせたくなる。
しかし、おれの事を疎んで名前を呼ばない訳ではない事くらい分かっている。
だから、そんな顔をさせたい訳じゃない。
「冗談だ。フフッ」
悪かったなと身体を抱き込んでいた腕も離した。
「…、……ドフラミンゴさん…」
小さな声で、だが確かに呟いたその音はなんとも言い難い高揚。
そっと名無しさんの手を取り、その指にくちづける。その顔は見る間に紅く染まり上がるが、構わずその指一本一本にゆっくりくちづけていく。
手を開かせては指の腹にも一つ一つ唇を落としていく。名無しさんの目を見ながら、小さなリップ音も忘れずに。
全ての指にくちづけてから、指を一本根元までぱくりと咥えこむ。びくりと震える身体の振動が指を伝っておれの舌をくすぐる。
執拗なまで丁寧に舐め上げる薬指。
存分に舐め上げた所で離してやると、それはおれの唾液でテラテラと光っている。その様を見て更に広角を引き上げる。
そろそろ恥ずかしさのあまり逃げ出すか。そう思った時、伸びてきた手。
今度はおれが目を皿にする中、名無しさんはそっとおれの顔に指を這わせる。
恐る恐るとも言える、そんな危うい手付きだが、指は着実に何かを辿っている。
「…ドフラミンゴさん」
危うい手付きで、不馴れだがおれの頬に綴られた初めての…
あいしてる
(言葉にならない、それは愛の形)