Doflamingo

□愛を囁きあう
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「別れてくれよ」




隣りの男が言った。




「随分とカンにさわる言い方をするのね」




私は本を読んだまま言った。




「そうか?」



「そうよ。
それじゃまるで、再三別れを告げているのに応じないで彼氏の家に通っては居座り続ける諦めの悪い女みたいじゃない、私」




ページをめくる。




「フフ、悪かった。
言われてみれば、そんな感じがするな」



「ええ、あなたがいうと一際するわ。しかも直ぐに謝るなんて尚更」



「確かに、お前はそんな未練がましい女じゃねぇ」



「ええ」




ページをめくる。




「じゃあ、コレを読み終わったら出て行くわ。あなたの本だから返さなくちゃ」



「そんなに急じゃなくたっていいぞ。別に本くらい持って行ったって構わないし」



「私、過去形になる男性の私物は手元に置いておかない主義なの。それを処分するのも好きじゃないから最後にみんな返すのよ、いつも」




ページをめくる。




「と言う事は今日を最後にするのか」




ページをめくる。



 
「あなたが言ったんでしょう?
昨日言っていたなら昨日が最後だったし、明日言ったなら明日が最後よ」




ページをめくる。




「そうか」



「そうよ。
それと、あなたがくれた趣味の悪い装飾品達は後で送るから」



「フフフ、ひどい言い草だなぁ、お前だって喜んでたじゃねぇか」



「それは愛しい人からの物だもの。この上なく嬉しいに決まっているけど、そうじゃなくなるのなら話しは別だわ」




ページをめくる。



いまいち話しが入って来ないわ。

早く、終わりにしてしまおう。



ページをめくる。




「私の物は処分してもらって構わないわ。持ち帰れと言うなら持ち帰るし」




ページをめくる、その手を遮られた。


そしてパラパラと戻る。隣りの男の手によって。




「この辺か…?」



「どう言うつもり」



「そうそう、ココ。こっから全くちゃんと読めて無いだろ。折角なんだからちゃんと読めよ」



「…何がしたいのよ」



「下らない冗談を言って悪かった。だからそんな顔しないでくれ。って言いたいの」




男が戻したページからまた読み出す。



 
「コレを読み終わったら出て行くわ」



「だったら読み終わらせねぇ」




男の手はページを一番最初まで戻した。




「コレを読み終わらない限り出て行かないわよ」



「あァ」



「毎日通うわよ」



「大歓迎だ」




このニヤついたいやらしい顔。

ど派手な格好に鳥並の頭。

意地悪を通り越した鬼畜で、ズル賢くて、女遊びは激しくて、しまいには笑えない冗談で人を振り回すこの男。




「…ドフラミンゴなんか、大好きよ」



「フフフフ、俺もお前が堪らなく好きだぜ、名無しさん」



「よく言うわ」



「本当さ。俺はお前が別れてくれって言ったって、絶対に放さない」



「本当に嫌な男ね、あなたって」



「お前は本当に極上の女だな」





愛を囁きあう



 
(はぁ、何でこんな捻くれ者が恋人なのかしら)
(フフフッそれはお互い様だろ)
(やっぱり出ていこうかしら)
(なんだ、そんなに監禁してほしかったのか?)
(物騒な人ね)
(でも好きだろ?)
(えぇ、好きよ)


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