smoker

□例えばね、愛を語るなら 夢の中
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今日はとても気分が良くて、いつもよりばりばりと働いた。


何故かと聞かれれば理由は実に単純なもので、今日は1日スモーカー大佐と一緒にいる事が出来たから。

しかし海兵たるもの、その様な事で業務の質に影響を与えるなど言語道断。もっと自らを戒めねばならないのだけれど、思い出すだけで顔がだらしなくもゆるんでしまう…。



今日ローグタウン海軍派出所は“一大書類整理日”であった。
最近何かと忙しくて手を付けられず溜りに溜っていた書類を片付けるべく、殆どの海兵がデスクワークに従事していた。

私は元々海軍本部ヒナ大佐の元に着かせて頂いていたのを、暫く前ここに異動となった。
情けない話しあまり腕に自信は無いけれど、その分雑務処理や書類整理など、デスクワークについては他の人よりも少し得意と言えた。

そんな私にとって今日は本領発揮と言った所で、恐れながら書類管理に関してはスモーカー大佐にとり変わり陣頭指揮をとらせて頂いていた。






「名無しさん!行くぞ」

「はい!……え、…あの、どちらへ…?」



時刻は昼を過ぎ、夕刻のせまる少し前。
溜っていた書類達はだいぶ片付き、さぁこれから大詰め…と言った所でかけられた声。


 
「いいからさっさと出るぞ!たしぎ、後は任せた」

「え、は、はい…!あ、たしぎ曹長、すいませんが行って参ります」

「いってらっしゃい」



にこっと笑って手を降るたしぎ曹長に一礼し、慌てて大佐の後を追う。





「あの…大佐、どちらへ…?」

「あぁ、巡回だ」

「ならば私では無く、たしぎ曹長の方がよろしかったのでは…」



私では、例え町で海賊にはち合わせたとて、たいした加勢は望めないと…自身が一番よく理解している。



「お前、今日まだ一歩も外に出てねぇだろ。それどころか昼もろくに食わず部屋に缶詰めで」

「え!あ…そう…いえばそんな気も…」

「だから巡回をかねた休憩だ」

「へ…?」

「大事な部下の体調管理もおれの仕事のひとつだ」



これは、本当に嬉しい言葉だった。

職務上だから気を配ってくれたのだと拗ねる事なんてない。だって職務上だとしても大佐からこんな言葉が聞けるなんて、本当に驚きだったから。

多分大佐は分かっていらっしゃるのだ。私が力の面で役に立てなのを気にしている事に。
だから私にとって『大事な部下』と言ってもらえるのは本当に嬉しい事だった。



「ありがとうございます、大佐」
 
「ん?あぁ、それにおれも限界だ。1日中机にかじりついてたんじゃ頭がおかしくなる」

「ふふ、でも大佐は途中から石を積んでらっしゃった様に見えましたが」



そんな事をぼやけば、「そんな所見てんな」と頭を乱暴に、でも優しく撫でまわされた。

そんな他愛もない話をしながら町を一周し、みんながヒーヒー言っているであろう派出所へ戻った。







「スモーカー大佐…!印を!」

「名無しさんさんこれはどうしたら…!」

「テメェ等…」

「お仕事です、大佐」



パン、と手を叩いて仕上げに取り組む。外の空気を吸ったおかげでその後はだいぶはかどった。








「じゃあ、後は私がまとめておくのでお帰り頂いて構いませんよ」

「しかし…」

「まとめると言ってもあと10分もあれば終わりますから、大丈夫ですよ」



そう言ってみんなを帰らせた。みんなは明日も重労働が待っているのだと思うと、これ以上残らせるなんて出来なかった。

スモーカー大佐も本部に呼ばれて出かけていたので、明日までに片付けて大佐の負担を減らすためにもあと一息……。



「よし、目標は1時間…!」



昼の事を思い出してはニヤニヤとしながら頑張ったのだけれどやっぱり1時間などでは終わらず、仕方が無いからソファーで軽く仮眠を取る事にした。







 
「名無しさん、名無しさん…」




名前を呼ばれて振り向けば、大佐はゆっくりと私の頬に触れ、優しく髪を撫ぜる。昼間の時より優しく、それは甘やかな手つきで。

こんな大佐は初めて見た。こんな優しい表情…


私がただ惚けていると、今度はその唇が頬へ落ちて来た。
驚く間もなくそれは瞼に、額に、鼻筋に、柔らかく口づけを落として行く。
くすぐったさにみじろげば、両の手で顔を包み込まれ…




「たい、さ…」

「!」

「…すき、」





“愛してる”夢の中の大佐はそう囁いて、甘く口づけてくれた。








「…!、……何て…夢を…」



はたと目が覚め額に手をやりぼやく。
あんな夢を見るだなんて…明日大佐に合わせる顔が……



「ほぅ、合わせる顔が無い様な夢ってのはどんなんだ?」

「!!!っ、た、いさ…!?」



その聞き慣れた声に驚きがばりと起き上がれば、私の足元に腰掛けているスモーカー大佐。



「なぁ名無しさん、それってのはこんな夢か?」



そう大佐の両の手で顔を包み込まれ…


あ、これは…



「愛してる」

「!、っ、ふぅ…ん…」



甘く、熱い口づけを…








例えばね、愛を語るなら 夢の中




(夢の中のおれは、もっと凄い事してたか?)
(!!そ、んなことは…!)
(なら、これからするぞ)
(えぇぇっ!?いや、そ、そんな…)
(なんだ、おれの夢の中じゃいつもお前は激しく求…)
(いやー!///)


 

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