銀魂

□第31話
1ページ/4ページ






伊東達の帰還祝いとして行った宴会から数日後。ケイは宴会の翌日から一心不乱に仕事をし、それまで受けていた注文を全て終わらせた。そして今日は再び真選組での女中の仕事の日である。見慣れた門をくぐると、どうも雰囲気がいつもと違うことに目ざとく気づいたケイは、自分の居ぬ間にもしや、と思ったところ、その予感は的中する。



「オイ きいたか土方さんの話。無期限の謹慎処分だって」

「局中法度を犯したってんで伊東さんは切腹を主張したらしいが、局長やみんなの説得でそれは免れたらしい」

「事実上の更迭だよな。もう多分戻ってこれねーんじゃないかな」



そんな隊士同士の話を門をくぐってすぐに耳にしたケイは気を引き締めた。これからが勝負所である。ふと視線を感じた方へ目をやれば、中途半端に手を伸ばしたまま愕然とした表情の近藤がいた。



「……えーっと、お疲れ様です。私の耳に入らないようにしようとしたんですかー?」

「え、あ、いや、そ、そういう訳じゃ…」



滝のように冷や汗を流す近藤に一つ息をつき、苦笑する。



「これだけ噂になりそうなネタ、隠し通すなんて無理ですよ。ていうかそもそも隠さないでくださいー」



ここじゃなんだから、と近藤に促され部屋に入ると、入った途端に近藤は頭を下げた。



「…何の真似ですー?局長ともあろう人が、どうして一介の女中に頭なんて下げてるんですか。土方さんの処分については私には何も関係ないですし、お門違いですよ」

「ケイを侮ったことだ。確かに、俺達の中で成り立ってる規律に従って、会議を経て決定したことだから、処分については俺は何も言わん。だが、その事についてもっと早くにケイに言うべきだったと反省してるんだ。紛れもなく俺達は仲間だろう。あまつさえ俺はそれを、一瞬でも、知られたくないなどと思ってしまった」

「…謝罪は受け取りますので、頭を上げてくださいー」



悲痛な表情で頭を上げる近藤に苦笑すれば、ますます近藤は小さくなる。



「もー、やめてくださいよ。近藤さんは、人の上に立つお方なんですから、昔からの付き合いだとか、情だとかに捉われちゃいけない事だってわかります。あっ、1つお願いがあるんですけどいいですか?」

「な、なんだ?勿論聞くぞ!」

「内容聞く前にOKしちゃっていいんですー?今日と、明日から3回分ココお休みしますね〜」

「え゛っ!?」



こんな時でこそ、古株の隊士達にも馴染みが深いケイに居て欲しいのに、そんな時に彼女はここに来ないという。近藤の悲愴感に満ちた表情にケイはもう取り消せませんよと笑う。

「近藤さん」

「どこかの名探偵のようなセリフですが、事実と真実は必ずしもイコールで結ばれる訳じゃないんですよ?」

「まあ、私は私で動きますんでー」



首を傾げる近藤を後目に、ケイは部屋を後にする。握りしめている携帯はまだ震えない。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ