気まぐれ女王様2

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水を吸って重くなった身体と、峰打ちだったとはいえ未だグラつく頭。殺されてはいねぇが、完全にこの勝負はオレの敗北だった。これ以上、オレの誇りは醜態を晒す事を是としねぇ。






「おろせ」







きっと、アイツは、オレのその心情を理解していようが怒るだろうなぁ。怒って、泣いて。最後に仕方ねぇって笑うんだぜぇ。想像できんだぁ。例えオレが死のうが、アイツは生きてく。泣いて、泣いて。立ち上がる。






「剣士としてのオレの誇りを 汚すな」







だから、オレも。アイツに恥じるような生はいらねぇ。






「う"お"ぉいっ うぜぇぞ!!」








最初に欲しかったのはあの笑顔。いつだって電話先の相手にしか向けられない、甘やかな。
そして知る。ハニかんだ笑顔に怒った顔、拗ねたり焦ったりする様。訳がわからねぇくらい矛盾した性格やその意志の強さも。
知る度、焦がれてゆく自覚もあった。手に入らないと知っていたからこそ、増してゆく想いも。






「ガキ…剣のスジは悪くねぇ」







アイツが男でも女でも。異能者であろうがなかろうが。きっと惹かれた。今、こんな状況でさえ思い出すくらいには、想ってるんだからなぁ。






「あとはその甘さを捨てることだぁ」







待ってるっつったのに、約束、守れねぇなぁ。

目前に迫る鮫が見えた時点で、オレは目を閉じた。

最期にあんなモン見るなんて冗談じゃねぇ。










「……リオ」





自然と口角が上がった。
―――瞼を閉じれば、笑うアイツが見えるんだからなぁ。














 

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